第1話
鳳来高校3年D組の担任教師・九条里奈は、教師としてただただ生徒との適切な距離と適切な判断を選ぶだけの1年を過ごし、涙一つ流れぬ卒業式を迎えていた。そんな1年に感動や感傷の想いはなく、無事に1年を終えたことに対しての安堵感だけがあった。巣立つ生徒を上階の吹き抜け廊下から見つめる九条が、職員室へ戻ろうとした、その瞬間、背中に強烈な衝撃を受け、落下する九条。慌てふためく中、視界に入ってきたのは、自分の背中を押したであろう何者かの手があり、「D組 卒業おめでとう」と記された深紅のコサージュが・・・。生徒に殺された・・・。そう理解し正に地面に着きそうになったその瞬間・・・ハッ!と目を開けると、なぜかそこは3年D組の教壇の前であった。黒板には「令和5年4月6日」という1年前の始業式の日付。そして目の前には30人の生徒。九条の手は震える。九条の目に映る生徒たちは、1年後、自分を殺す「30人の容疑者」だからだ・・・。
第2話
「私は、何でもします」・・・3年D組全員が心の底から笑って卒業できるように。そして自分自身が1年後、生徒に殺されないために、この教室を変えなければならない。高校教師・九条里奈は、強い覚悟を持って2度目の1年に臨む。前回の人生で寄り添うことができなかった生徒・鵜久森に起きていた仕打ちを暴きだした九条は、生徒たちに変化の兆しが見られたのも束の間、夫・蓮から離婚届を突き付けられてしまう。離婚を受け入れた前回と同じ轍は踏みたくないと思い悩む九条を目出し帽をかぶった男たちが襲う!一方、3年D組の教室は週明けから様子が一変。今まで鵜久森を無視していた生徒たちが、何事もなかったように笑顔で鵜久森に話しかけてくる・・・。そんな中、九条は、親の借金に苦しめられている瓜生のある瞬間が気になって、家庭訪問と称して瓜生のアパートに乗り込む。そこで九条が見た光景は・・・。
第3話
3年D組の黒板に「九条里奈を殺害する」と言う殺害予告が書き込まれ、学校は騒然となる。野次馬が現れ、教員室も慌てふためく中、3年D組の面々は相楽たちを疑うが、相楽はそれを否定する・・・。一方、九条はその犯行の様相から自身に対する殺害予告と推察し、「ある生徒」の前へと立ちはだかり、その生徒に告げる。「あなたがこの現状を変えたいのならば・・・何でもする」と。相楽たちは、この殺害予告が書かれたことで、教室に仕掛けられた監視カメラが作動していないことに気づく。そして、生徒同士の目論見により、「九条里奈担任はく奪」の嘆願書を取りまとめ、九条を教室から追放することに成功する。九条は、学校に居られなくなったことにより、この問題を解決するために鵜久森を信頼する味方として頼ると宣言。その想いを受け取った鵜久森は、「ある行動」を開始する・・・ 。
第4話
九条は離婚の話を撤回してくれた夫・蓮に、自身が2週目の人生で、これまで体験したことを打ち明けると、蓮の口から意外な言葉が飛び出てくる・・・ 。それから1か月、3年D組には静かな時間が流れていた。鵜久森は東風谷と阿久津と仲を深め、鵜久森の周りは緩やかに良い変化を見せ始めていた。その光景にイラ立つ西野たちのグループは、九条の担任変更に失敗してからというもの、次の一手を出すこともできず、相楽も不気味な沈黙を続けている。前回西野からの指示にミスを生んでしまった江波は、常に友人の顔色をうかがって過ごす日々を送っていた。そんな中、江波は幼馴染の浜岡から想いを告げられ、その返答に迷っていた。すると突然、九条は江波を化学準備室に呼び出し、「昨晩、浜岡修吾さんという方から交際を申し込まれましたか?」と問う。そして「その方とは金輪際、関りを断ってください」「2023年8月31日。江波さんが持っていたカッターナイフで、浜岡さんを刺すことになる日です」と告げる。
第5話
夏休みを経て、九条にとって「地獄」と称されることになる2学期が始まり、鳳来高校は一か月後に文化祭を控えていた。そして九条は、文化祭での催しの責任者に瑞奈を指名する。学外でプロとして音楽活動をしていて、クラスの皆と交わることが無かった瑞奈は、文化祭に参加する意識もなく、その提案に驚きを示す。その上、皆からはその風貌や行動に対して「変だ」「非常識だ」「調子に乗ってる」と批判されてきた。なのになぜ自分が・・・と戸惑う瑞奈だったが、その文化祭の催しに引退公演を行う予定であるダンス部の生田から「有名人風吹かせて私たちの青春をぶち壊すのだけはやめてね」と睨まれる。瑞奈は、担当を断るため九条を追いかけると、九条から「文化祭前日、ある問題が生じ、今年の文化祭はなくなります。それを止められるのは瑞奈さん、あなただけです」 と告げられる。そして最後に、はこの物語を揺るがす「ある事実」が判明することになる・・・。
第6話
文化祭の後の打ち上げの際、鵜久森は東風谷から不意に想いを吐露された。その言葉を受け、何かを返そうとしたが、東風谷は漏れ出てしまった想いに戸惑い、飛び出して行ってしまう。東風谷を見失う鵜久森は、雑踏の中で自身に起きた「二周目」の人生を思い返していく。一方の九条は、鵜久森と共にいつものようにお昼ご飯を一緒にしていた際に「鵜久森さんも同じですよね?」と打ち明ける。自身が「二周目」であること、そして鵜久森もそうであること。互いに起きた不可思議な現象を確かめ合い、そしてもう一つ共通して感じる「感覚」を語る。それは「3回目は絶対にない」、だからこそ、私達は未来を変えるために今を必死に生きているのだと。そんな中、九条は、独りで想い悩み急な休学を申し出た東風谷の元を訪ね、その理由を尋ねる。そして、想い悩む東風谷に、いつものように「覚悟」をもって「私にできることは、何でもします」と真っすぐに告げる。
第7話
鵜久森が非業の死を遂げ、鳳来高校は休校となる。校内の立ち入り禁止区域内で起こった悲劇は世間の注目を集め、マスコミの対応に追われる教員たち。鵜久森の身に一体何が起きたのか・・・?その真相は依然として分からないままだった。かけがえのない教え子を亡くして失意の九条は、運命を変えられなかった自分を責めながら鵜久森の葬儀に参列する。式場で出会った鵜久森の母・美雪から、意外な言葉を受け、ふさぎ込んでいた心は突き動かされることに・・・。更に、夫・蓮の支えもあって、やがて顔を上げる九条・・・!鵜久森の死を「運命」で片付けてはいけない・・・。彼女を「命を失った生徒」ではなく、「最後までその命を燃やし生き抜いた生徒」であったと証明するため、九条は生徒が待つ3年D組の教室へ向かうのだった 。鵜久森という一人の生徒を通して、一生忘れることの出来ない魂の授業が、今ここに開講する!
第8話
「我々は、全力でその理由と向き合いたいと思っています。」 九条と3年D組の本気がもたらした学校の記者会見は、鵜久森の母・美雪の心にしっかりと届き、自分も「今以上に向き合わなければ」と顔を上げる。しかし、向き合うべきは娘を追い込んだ「何か」ではなく、娘は何をするためにあの場所へ行ったのか、最後にどんな顔をしたのか、ただそれが知りたいだけで、誰かが追い詰められるようなことは望まない・・・。そんな美雪の思いを九条も力強く受け止めるが、教室では一つの「事実」にたどり着いた生徒達が、相楽を追いつめる。あの日、浜岡が学校に来ていたこと、そしてその浜岡と相楽が繋がっていたこと。それが露見した教室内で、相楽はクラス全体を凍り付かせる衝撃の一言を口にする。「アイツは、俺のせいで死んだ。」 その一言の意味とは・・・。
第9話
鵜久森の転落事件の後で姿を消していた浜岡を、迫田たちが発見する。「事件の日・・・なんで学校にいたんだ?」迫田が問い詰めると、浜岡は3年D組の「ある生徒」に頼まれたからだと答える。「ある生徒」の依頼で学校へと侵入したと言う浜岡の真偽は・・・ ?九条は、迫田らの報告を受け、学校に侵入した浜岡が、鵜久森にとって「誰にも知られたくない何か」を見つけたのではないかと推察し、そのことに付いて頭を巡らせるが・・・。翌日、九条と3年D組の生徒たちは、その「ある生徒」から直接話を聞こうとするが、その生徒は学校に現れなかった。その時、九条の頭を最悪の状況がよぎる・・・。もしもその生徒が罪の意識に苦しめられ、絶望していたとしたら・・・。慌てて教室を飛び出し、捜索に走る九条と、同じ思いの3年D組の生徒たちも教室を飛び出して・・・ !「生徒に最悪の終わりを選ばせては、絶対にいけない・・・!」ついに、一つの事件の「真相」へと迫る。
第10話 最終回
1年前のあの日、突如与えられた2周目の人生。生徒に突き落とされ殺されるという未来を変えるため、「何でもする」覚悟を決めた九条は、この世界を「変えよう」と、ただひたすらに駆け抜けた。その思いに、これまで無自覚に人を傷つけ、無自覚に我慢をし、無自覚に見過ごしてきた3年D組の生徒たちも、一人また一人とその「本気」を解放してきた。そして再び迎える、卒業式の日、九条は1年前と同じ場所で、「あの人物」と対峙する!九条の前に現れるのは果たして誰なのか・・・!?その「運命」の結末は・・・!?「変わらない」と諦めている貴方へ・・・。3年D組担任・九条里奈が贈る最後の授業・・・
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(日本テレビ、土曜ドラマ「最高の教師」より)
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