第1話
5年前に「明智小五郎賞」を受賞し、勤めていた会社を辞めて作家業に専念した三馬太郎は、その後新作を出すたびに初版の部数を削られ、ネットの評価も散々な状態だった。ある日、太郎は亡き父の故郷である山間の集落・ハヤブサ地区を訪れる。父から相続し放置したままになっていた一軒家の様子を確認するためだったが、太郎はハヤブサの豊かな自然に心をつかまれ、この地に移住することを決意する。新生活をはじめてまもなく、太郎は近所に住む同年代の青年・藤本勘介(満島真之介)に誘われ、地域の飲み会に参加し、そこで知り合ったハヤブサ地区の男たちに消防団への入団を勧められる。自分にはまったく似合わないからと、いったんは入団を断るが、その後、地区の住人・波川志津雄(大和田獏)の自宅で火災が発生。消防団の必死の消火活動を目の当たりにした太郎は、自分もハヤブサを守りたいという思いに駆られ、消防団への参加を決意する。
第2話
亡き父の故郷であるハヤブサ地区で暮らし始めた作家・三馬太郎は連日、入団したばかりの消防団の訓練に駆り出されて疲労困憊。実は、消防団が訓練の成果を披露する「消防操法大会」が迫っており、分団長の宮原がピリピリしているのだ。そんな中、太郎は連続放火事件の犯人が、先日遺体となって見つかった山原浩喜だというウワサが出回っていることを知るが、太郎には彼がそこまで悪い人間だとは思えず、困惑する。その矢先、太郎は消防団のメンバーで役場勤務の森野から「相談がある」と声をかけられる。約束の時刻に居酒屋に行くと、森野のほか、役場の企画課員・矢内潤と、謎の美女・立木彩の姿があった。相談というのは、ハヤブサの町おこし動画企画にまつわることで、矢内は作家である太郎の力を貸してほしいという・・・。
第3話
ミステリ作家の三馬太郎は、ハヤブサ地区の町興し動画のシナリオを書き上げ、映像ディレクター・立木彩との打ち合わせをする。彩との会話に心地よさすら感じる太郎だったが、彩は大事なことを太郎に隠していて・・・。そんな中、太郎は亡き父が遺した昔のアルバムから、ほかの写真とは異質の雰囲気を漂わせる、シャクナゲの花を手にした美しい女性のポートレートを見つける。彼女はいったい何者なのか?気になった太郎は謎の女性の素性を調べ始める。その矢先、東京から太郎の担当編集者・中山田洋が訪ねてきた。ハヤブサでゴルフや釣りを楽しむのが目的で、消防団のメンバーとも居酒屋で顔を合わせ、意気投合する。翌日、太郎と中山田は、山奥の渓流釣りに出かけ、道に迷ってしまう。その山は、かつてハヤブサで自ら命を絶った女性の幽霊が出るといわれていた。そして消防団メンバーを震撼させる最悪の事件が起きる。
第4話
亡き父の法要のために随明寺を訪れた三馬太郎は、これまで放火された人々の寺への寄進額がいずれも飛びぬけて高いことに気づく。その矢先、編集者の中山田洋から聞いた情報に、太郎はがく然とする。中山田は、消防団メンバーとメールのやりとりをしているせいでハヤブサ地区の情報通になっていた。そして、太郎が脚本を執筆した町興しドラマの企画が、町長・村岡信蔵のダメ出しを受けて中止になったというのだ。ただひとり真実を知らされていなかった太郎は、立木彩を問いただす。彩は完成した脚本を町長に直接見せて考え直してもらうつもりだったと訴えるが・・・。そんな中、町長がドラマのかわりに考案した町おこしイベントが開催された。ハヤブサに残る伝説にちなんでツチノコを捜索するという催しで、消防団の面々も駆り出される。太郎たちはそこで、町長にドラマ企画の再考を直談判する彩を見かけて・・・!?更に、村岡に挨拶する太陽光発電企業「ルミナスソーラー」の営業・真鍋明光の姿も目撃する・・・。
第5話
映像ディレクターで町興しドラマを企画する彩と一夜を過ごした直後、編集者・中山田からの連絡で、彩が新興宗教の元信者だと知らされた太郎。彩が入信していた「アビゲイル騎士団」は数年前、教祖と幹部3名が信者12名を拷問の末に殺害するという事件を起こし、世間を震撼させた教団だった。教祖と幹部は逮捕されたが、動機もうやむやなまま死刑が確定。教団は自主解散に追い込まれたが、一部の元信者はいまでも教祖を信じているという噂もある・・・。彩はその教団の広報として、PRビデオを制作していたらしい。太郎が戸惑いを消化しきれない中、町興しドラマの撮影がスタートし、監督を務める彩のもと、消防団メンバーもエキストラとして参加する。太郎も現場の手伝いに加わるが、気まずくて彩と目を合わせることができない。太郎のぎこちなさが彩にも伝わり、彩から「私たちってどういう関係ですか」と聞かれた太郎はすぐに返答することができなかった・・・。
第6話
彩の過去を受け入れ、交際をスタートした太郎は、苦戦していた連載小説も最終回の評判はよく、彩とともに過ごす何気ない日々に幸せを感じていた。そんな中、太郎は太陽光発電企業「ルミナスソーラー」の営業マン・真鍋が集落の一軒の家に出入りしているのを見かける。その家は、「随明寺」に多額の寄付をし、かつルミナスソーラーから土地の売却を持ちかけられている5軒のうちの1軒で、太郎が次に放火のターゲットにされるのではとにらんでいた家のひとつだった。その直後、太郎の背後に消防団メンバーの山原賢作が現れる。賢作は3年ほど前から真鍋のことを不審に思って密かにマークしていたという。2人は消防団に集合をかけ、真鍋が連続放火に関わっているのではないかという推理を伝える。団員たちは次の放火の標的を探るべく、手分けして5軒に聞き込みを開始する。
第7話
最新作の書籍化を記念してミステリ作家・三馬太郎のサイン会が都内の書店で開催される。それにあわせてハヤブサ消防団のメンバーも研修旅行と称して東京へやって来た。一同は大都会に大はしゃぎするが、食事の席で勘介は自分たちが不在のハヤブサで火事が起きないかと不安をもらす。それを聞いた太郎は意を決して「放火犯は今、ハヤブサにいない」と告げ、太郎の推理によって突き止めた連続放火犯の名を消防団メンバー全員の前で明かし、一同は愕然ととする。その人物とはいったい・・・!?ところがその直後、更なる衝撃の事態が太郎たちに襲いかかる!同じ頃、彩が残るハヤブサ地区でも、不気味な異変が起きていて・・・。
第8話
東京からハヤブサ地区に戻り、多くの人で賑わう町に驚いたミステリ作家の太郎は、混乱しながらも映像ディレクターの彩の家へと急ぐ。ところが、太郎の前に「アビゲイル騎士団」の後継団体、「聖母アビゲイル教団」の弁護士・杉森登と太陽光発電企業「ルミナスソーラー」の営業員の真鍋が現れる。杉森は、彩は自分たちの仲間であり、もう太郎には会わないと宣言し、彩も一瞬だけ姿を見せるが、太郎から目をそらしてすぐに扉の向こうに消えてしまう。ハヤブサ地区が賑わっていたのは、観光客ではなく「聖母アビゲイル教団」の信者たちであった。ハヤブサ地区の空き家には、すでに多数の信者が入居を始めていて、その浸食の速さに消防団のメンバーは驚愕。このままではハヤブサが教団に乗っ取られてしまうのではないかと危機感を募らせた消防団のメンバーは、八百万町の町長・村岡信蔵に働きかける・・・。しかし、太郎は教団がなぜハヤブサという土地を選んだのかが腑に落ちないでいた。
第9話 最終回
随明寺の住職・江西が「聖母アビゲイル教団」を受け入れたことに太郎は愕然とする。その矢先、太郎たち消防団は近々、教団が「聖母降臨」の儀式を行う予定だと知る。教団は発足以来、江西の亡き妹である山原展子を神格化し「聖母」として崇めてきたが、その後継者として新たな聖母擁立を企てているようだった。太郎は、その「新聖母」こそ、立木彩だと直感し、儀式は皆既日食の日に開催されるに違いないと推理する。ハヤブサ消防団のメンバーは、儀式を阻止しようと一致団結。急遽東京から駆けつけた中山田は、これ以上踏み込むのは危険だと心配するが、太郎は「ハヤブサは僕らハヤブサ分団で守らなければなりません」と言い、一同も大きくうなずく。そして儀式当日。太郎は作家である自分にしかできないある方法で、彩を止め儀式を制止しようとするが・・・。
(テレビ朝日、木曜ドラマ「ハヤブサ消防団」より)
|