第1話
警察庁長官官房長・榊山慎一郎(福井晶一)の肝いりで、本庁から特別会計係として万町署警務課に派遣された一円。警察の財政破綻を回避すべく、経費削減の特命を背負い、捜査費を監督する任務を与えられる。万町署で経費削減の対象となったのは、捜査費の使い方を問題視されていた刑事課。捜査費の20%カットを命じられるが、強行犯係係長の湯川哲郎(沢村一樹)はこれに猛反発する。湯川は多額の出費を生み出す張本人だったが、本人はそれらすべてが捜査のための必要経費だと言い張る。ところが円は、湯川の言い分などお構いなしで、刑事課の捜査雑費を今月から20%カットすると明言。「現場を知りもしないくせに」と怒りの矛先が円に向かった直後、管内で変死体が発見されたとの通報が入る。発見されたのは、近隣の大学講師の男性で、湯川たちが捜査を始めると、そこにはなぜか円の姿も。そして後日、偶然居合わせた捜査会議で、円は被害者の財布の中身にある違和感を覚えて・・・。
第2話
円は、20%の経費削減達成のため、刑事課の残業を月10時間減らすことで、4%の削減をもくろむが、実際は、好きで残業をしているわけではなく、事件が起きるから残業を余儀なくされているだけだった。珍しく事件が起きず、湯川班のメンバーが定時で帰ろうとする中、円が電話を受けると、ショッピングモールに爆弾を仕掛けたという犯行予告で、湯川班の残業が確定する。ところが、現場に駆けつけた湯川たちが店内を捜索しても不審なものは何も見つからず、さらに爆破予告時間を過ぎても何も起きる気配はない。現場にやって来た円は、余計な残業時間が増えるので早く撤収するよう呼びかけるが、湯川は、やじ馬の中に怪しい男を発見する。 それは、5年前に管内で爆破騒ぎが起きた際、爆弾を製造した罪で湯川に逮捕された沼田だった。再犯を疑う湯川は、張り込み部屋を借りて沼田を徹底マークし始めると、残業時間と経費は膨れ上がる。更に、湯川の勝手な行動に振り回され、うんざりしているはずの中西や大竹が、なぜ湯川のやり方についていくのか理解できない円。 そんな中、湯川を追ってクレープ店へやって来た円は、湯川が小銭を落とした姿を見て、あることに気づき・・・。
第3話
毎年行われている一日警察署長イベントに刑事課が駆り出されると知った円は、彼らの残業時間と経費が増えることを理由にイベントの中止を訴える。年に一度の恒例行事を誰よりも楽しみにしている湯川は、イベントの中止に大反対し、中止にするなら仕事を放棄してストライキするとまで言い出す。そこで円は、イベントを開催する代わりに経費削減に協力するよう持ちかけ、利害が一致した2人は手を組むことに。一方、刑事課のメンバーは、副署長の中塚が、爆弾犯との交渉に差し出した500万円の出どころが気になっていて、誰かに脅されているのではないかとにらみ、ある大胆な方法で中塚の身辺を探ることを思いつく。そんな中、地下アイドル・マリリンのライブ会場で、売上金30万円を強奪する事件が発生し、防犯カメラの映像から、被疑者として糸間という男が浮上する。同じ頃、湯川との約束を守るため、イベント開催に向けて動き出した円は、一日警察署長に大人気の若手俳優・氷河涼をキャスティングすることに成功する。ところが、本番3日前に想定外の事態が起き、イベントは中止の危機に追い込まれてしまう・・・。
第4話
万町署刑事課強行犯係係長の湯川が署内に設置されていた隠しカメラの存在に気づいた。湯川は、署をあげて経費削減を推し進めているにも関わらず、署内の監視カメラの数が増えていることに違和感を覚え、円を追い詰めると、観念した円は、その理由を湯川班のメンバーに打ち明ける。そんな中、管内で募金強盗事件が発生する。手がかりは被疑者の足跡に付着していた植物片だったが、あまりにも微量だっため科捜研での分析が難しく、専門家による同定調査が必要になる。しかし、捜査に協力してくれる万町大学の宇佐美教授は、湯川のことを激しく嫌っていた・・・。一方、相変わらずの運の悪さで、日々身の上に不幸な出来事が降りかかる円は、中西から 「満面破顔茶」という幸運を呼び込むお茶を譲ってもらう。すると、これから起きる幸せを予兆するかのように、円のまわりで思わぬ出来事が・・・。更に、同定調査の費用を少しでも抑えようと、須賀と一緒に宇佐美の元を訪ねると、宇佐美も「満面破顔茶」を飲んでいると分かり、円は親近感を覚える。その頃刑事課では、 「満面破顔茶」の効果があったのか、中西が結婚を発表。警察の規則にのっとり、係長の湯川に交際申告書を提出するが、湯川は即座に却下して・・・。
第5話
万町署が統廃合される話が浮上する中、身代金5億円の人質事件が発生する。人質となったのはハッキングによって抜き取られた万町署の機密データで、タイムリミットは今夜0時。万町署には捜査本部が設置され、捜査の指揮をとるために、本庁から日下部管理官がやって来る。日下部は円と顔見知りのようだが、円は何やら警戒している様子で、その姿を見た刑事課のメンバーは、2人の関係が気になる・・・。すると、捜査に所轄の力を貸してほしいと、日下部が刑事課にやって来る。万町署内にリストラのうわさが飛び交っていたこともあり、手柄を立てたいさゆりと中西は喜んで捜査に加わろうとするが、円はなぜかそれを阻止しようとする。そんな円をあざ笑うかのように、日下部は湯川たちの前で円の隠された過去を明かしてしまう。そして日下部は、捜査本部の運営費用がすべて所轄に計上されるため、予算を湯水のごとく使い始める。経費ばかり膨らむ状況に業を煮やした円は、本庁より先に犯人にたどり着くべく、湯川班とともに独自に捜査を進めることになるが・・・。
第6話
脅迫者Xを見つけ出してほしいという円の頼みに、意外にも興味を示したのは、さゆりだった。思わぬ協力者の登場に感激した円は、翌朝、出勤前にコーヒーを飲むのが日課だというさゆりをおすすめの喫茶店へ連れて行く。ところが、店内に人の気配はなく、開いたままのレジの床には小銭が散乱していた。事件性を感じた2人が店の奥へ足を踏み入れると、突然、背後から2人の男に襲われ、さゆりが応戦するも、円が隠れていたもう1人に拳銃を突きつけられてしまう。3人の男たちは未成年で、どうやらSNSの闇バイトの広告を見て集まった即席の素人強盗のよう。拘束した相手が警察官だと知ってもまったく動じない17歳のナツメは、これまでに複数回犯行を繰り返しているらしく、何やら危険な香りがする青年で・・・。万町署では出勤してこないさゆりと円の身を案じ、GPSで居場所を突き止め現場へ向かう。監禁されたさゆりは、何とかして犯人たちの情報を得ようと、3人のうちで唯一、まともに話ができそうな大学生のトーマに、犯罪に手を染めた理由を尋ねると・・・。
第7話
経費削減20%が思うように進まず、円が焦りを見せ始める中、3カ月前に持ち主不明で見つかった1億円の落とし主を名乗る人々が万町署警務課に押し寄せる。一方、管内の商業ビルの階段から男が転落する事件が発生し、湯川と中西が病院へ向かうと、被害者は1億円入りのかばんを拾い、2日後にはその所有権を得るハラン人のノッカー・ウォールだった。大金がからんでいる事件にきな臭さを感じた湯川は、日本語はおろか英語も通じないノッカーを事情聴取するため、ハラン語が話せる通訳を呼びたいと円に頼む。しかし、国内でハラン語の通訳ができる人物はたった1人で、その費用は驚くほど高額だった。するとそこへ、かつてノッカーに仕事を紹介したという奈倉幸子がやって来て、無報酬での通訳を買って出る。幸子のおかげでノッカーと意思疎通ができたのだったが、ノッカーは大きな秘密を抱えていて・・・。一方、脅迫者Xの捜査を独自に進めていた円は、これまでの被害者が元警察官僚で政治家の小田切誠の近くにいる人物だと突き止める。そして、次のターゲットになりそうな人物をさゆりたちに伝えるが、湯川は相変わらず非協力的で・・・。
第8話
万町署の金庫から、現金1億円が消えたことで、金庫の管理責任者だった須賀は懲戒処分が濃厚となり、円は心配でたまらない。そんな中、脅迫者Xと接触する可能性がある西尾伸介参事官を尾行していたさゆりたちが、USBメモリーを入手し、そこには、不可解な映像と、元警察官僚で政治家の小田切誠が、新聞記者の芹沢詩織と電話でやりとりしている音声が入っていた。そして、詩織は、小田切に呼び出されたその晩に転落死していた。湯川は、事故に見せかけた殺人事件だと疑い、データの出どころである西尾の元へ向かい、Xとの関係を追及しようとする。しかし、その様子を何者かが物陰から見ていて、Xのリークで西尾が抱えていたスキャンダルが明るみに出る。Xによって辞職に追い込まれた警察官はこれで10人。Xの正体がつかめずにいら立つ榊山官房長は、円にある提案を持ちかける。その頃湯川は、本丸ともいえる小田切の元へ乗り込み、揺さぶりをかけると、その無礼な振る舞いはすぐさま警察上層部の耳に入り、湯川は停職処分になってしまう。
第9話
万町署刑事課強行犯係の湯川班は、警察のスキャンダルを追っていた新聞記者・芹沢詩織の転落事故死の真相が、脅迫者Xの正体に迫れるかもしれないと捜査を進めていた。そんな中、湯川の情報屋で転落事故について探っていた片桐が何者かに殺された。死亡推定時刻に現場にいたことから、遺体の第一発見者となった湯川は容疑者となり、湯川班は捜査から外される。湯川が犯人扱いされたことに怒りがおさまらない中西は、湯川の無実を証明しようと、上の命令に背いてでも捜査すると言い出すが、冷静さを欠いた行動をたしなめるさゆりと険悪なムードになり・・・。約束通り経費20%削減を達成したにも関わらず、榊山官房長から万町署が予定通り統廃合されると告げられ、ショックを受ける円。円は責任を感じ、万町署を守りたい一心で、ある人物のもとを訪ねる・・・。一方、殺人の容疑者となった湯川は、「Xの正体がわかった」と片桐が言い残して死んだことから、警察の監視下を抜け出し、Xについて調べを進めていた。円は、Xが起こしたとされる1億円盗難事件を足がかりに、Xの正体を暴こうと動き出す。すると、1億円が盗み出された当日、署内で予定とは違う怪しい動きをしている人物がいて・・・。
第10話
湯川班は、窃盗犯係の真壁を片桐を殺害した犯人、そして脅迫者Xとして逮捕した。更に、警務課の金庫から1億円を盗み出した犯人も真壁であることが分かった。逮捕された真壁は自らの罪を認めるが、片桐殺しは湯川の指示だったと話したことで、湯川には殺人教唆の疑いで逮捕状が出され、再び警察から追われることに。警察官としての誇りを大切にしてきた湯川が殺人を犯すなど信じられない円は、行方が分からない湯川を見つけ出して無実を証明しようとするが、なぜか湯川班は乗り気ではなく、それどころか今までの湯川の言動を非難する始末。一人湯川を信じ、懸命に湯川の無実を訴える円だったが、中塚によると湯川には借金があり、1億円が盗まれた数日後、その借金は返済されたという。更に、片桐の死を乗り越えようとする美和のもとにも、差出人不明で1千万円もの大金が送られてきたことが分かる。湯川が犯人であろうという状況証拠が明らかになる中、完全に行き詰まった円は、ある場所へと向かい・・・。
第11話 最終回
円は、警察上層部が事件化していない押収品を裏金に替え、警察署をデジタル化するために使っていたことを突き止めた。するとそこへ、亡くなった芹沢詩織の関係先を調べていたさゆりから、「Xの正体が判ったと思う」と詩織と須賀が並んで写っている写真が送られてくる。その頃、Xのアジトで目を覚ました湯川の前に、須賀が姿を現し、詩織を死に追いやった警察の闇を暴くと息巻く。湯川は、何とか思いとどまらせようとするが、須賀の耳に親友の言葉は届かない。更に、湯川の機転でアジトを突き止めた湯川班のメンバーも乗り込んでくるが、須賀には逃げられてしまう。須賀は、翌日の予算会議の場で榊山を断罪し、殺害すると思われ、それを阻止するためには、裏金問題を告発し、須賀が手を掛ける前に、榊山を官房長の座から引きずり下ろすしかない。円と湯川は須賀の凶行を阻止するべく、それぞれの立場で全力を尽くすが・・・。果たして、円は警察組織の闇を暴き、須賀の犯行を止めることができるのか!?
(関西テレビ「トクメイ!警視庁特別会計係」より)
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