第1話
河野美璃(堀田真由)は、ピアニストを目指していたが挫折し、現実から逃れるように実家のある東京を出て、従兄弟の心療内科医・遠山保(風間俊介)が働く神戸で一人暮らしをしている。音大時代の奨学金返済があるため、自由気ままとはいかないものの、音楽教室のピアノ講師として、ささやかな生活を送っている。ある日、音楽教室からのいつもの帰り道で、見慣れないキッチンカーを目にする。メニューを見て、大好きな「メロンジュース」に心惹かれるが、1杯700円は今の美璃には贅沢すぎる。別の安いジュースを注文する美璃の様子に、キッチンカーの店主・青木空(萩原利久)の温かな眼差しが注がれる・・・。数日後、音大時代の同級生・衛藤まりあ(森香澄)の紹介で、音楽出版社の面接を受けることになり、景気づけに初めて空のメロンジュースを購入する。空は「いいことあったんですか、なんか」と声をかけると、美璃は「いや・・・はい。たぶん、これから、あります」と答える。それから毎日、昨日と同じ今日があることを疑いもせず、美璃はキッチンカーに通い始める。
第2話
一杯のメロンジュースをきっかけに、同じ時を過ごすようになった美璃と空。しかし、一緒に出かける約束をしたその日、空は待ち合わせ場所に現れなかった・・・。一か月後、偶然、空のキッチンカーを見つけた美璃は、思わず空のもとに駆け寄るが、空は美璃との約束や、美璃のことすら覚えていないようだった。そんな美璃に、ひとりの女性・藤川沙菜に声をかけられ、空はあなたのことを忘れているから、あなたも空のことを忘れたほうがいいと告げられる。突然忘れてしまうとはどういうことなのか・・・混乱する美璃。心療内科医で従兄弟の保に聞いてみても、答えは一向に見つからない。そんな中、美璃が音楽教室をやめたことを知った保は、病院にピアノがあることを告げられ、しばらく弾いていなかったピアノに触れる美璃。その音色に誘われ、保の患者・宮下茜がやってくる。彼女は、自分が17歳までの記憶がないことを、事もなげに美璃に打ち明け・・・。その後、何度も空のキッチンカーに足を運んでしまう美璃は、意を決し、沙菜に空のことを教えてほしいとお願いする・・・。
第3話
空は記憶障害で、過去4回記憶を失っていることを知った美璃だったが、無邪気な空に惹かれ、二人は再び友達として、同じ時間を過ごし始める。ある日、美璃は空のキッチンカーで、ひとりの女性と出会う。コーヒーをしみじみ味わいながら、キッチンカーで働く空に、温かな眼差しを向けていた・・・。一方、空に友達ができたことを素直に喜ぶ沙菜。しかしその友達が美璃であることに気づき、複雑な想いに駆られていた。美璃の日常は相変わらずで、携帯ショップの仕事はストレスが多く、ピアノ教室を辞めたことを母のゆかりに言えないままで、保にも心配をかけ続けている。それでも昨日と同じ、空に会えることを楽しみに、美璃の足はキッチンカーへと向かう。そんな中、美璃はついに沙菜と再会・・・。思いがけなく3人で食事に出かけた合間に、知らなかった空の一面と、沙菜の深い覚悟に触れた美璃は・・・。
第4話
空にキスをされた美璃は、愛されている喜びよりも、忘れられる辛さで胸がいっぱいになり、涙が込み上げてくる。慰めようとする空に美璃は「あなたは、一度、私のこと、忘れてる。二度目が無いって、どうしてわかるの?」友達のままでいれば、傷つくことはないのに・・・。美璃の気持ちは揺れ動く・・・。そんな中、沙菜から、友達として二人で空を見守っていこうと提案されるが・・・。一方、自分が美璃を傷つけてしまったと感じる空は、記憶を取り戻すための治療に興味を持ち始めるが、空の過去を知る沙菜は、空の変化を前向きに捉えることができなかった。ある日、保から病院でコンサートを開くことを提案された美璃は、憩いの部屋へピアノを弾きに来ていた。茜は、突然美璃に、好きな人はいるのかと尋ねると、記憶障害を抱える空の話になる。忘れる方と、忘れられる方はどちらが辛いのか・・・。自身も空と似た記憶障害をもち、忘れてしまう側の茜の言葉が、美璃の胸に突き刺さる。そんな中、保の診察室にある人物が訪れ・・・。
第5話
美璃に連れられて、母・理佐子の家を訪れた空は、楽しい時を過ごしたものの、帰るときに突然のフラッシュバックに襲われ、キッチンカーに乗って姿を消してしまう。置き去りにされた美璃は、何が起きたのか分からず立ち尽くしていると、沙菜がやってきて厳しい言葉を投げかける。「あいつが死んだらあんたのせいや!」8年前、空はある壮絶な体験から記憶を失っていた。実家訪問をきっかけに、その辛い過去を思い出し、自ら命を断つかもしれない・・・。美璃は自分の軽はずみな行動を悔いるが、今は空を見つけ出すことが先決と、空と多くの時間を共有してきた沙菜の記憶を頼りに、立ち回りそうな場所を探し回っていた。その頃、空は、父の智也との思い出に耽りながら、一人海の中へと歩を進め・・・。
第6話
ある日、茜は、記憶を失う前に通っていた高校の同級生から声をかけられる。自分の知らない過去と、記憶を失ったきっかけをも知った茜はショックを受け、それを隠していた母の光恵に当たり、保の診察にも来なくなってしまう。その頃、美璃は、病院でのピアノコンサートに向け準備を進めていたが、難しいフレーズで指がもつれ、演奏が中断してしまった音大時代のトラウマを思い出し、不安な日々を過ごしていた。コンサートの情報を聞きつけ、連絡をくれたプロのピアニストで美璃の音大時代の同期のまりあや、東京からわざわざ聴きに来るという美璃の母・ゆかりにも、冷たい態度をとってしまう美璃。空は、プレッシャーでコンサートをやめることまで考え始める美璃を優しく勇気づける。美璃は、空に促されるまま、初めて廃墟を訪れた時に即興で演奏した曲の続きを弾き始めると、その音に誘われ、音信が途絶えていた茜が姿を現し・・・。それぞれが自分の過去と向き合い、新しい一歩を踏み出そうとしていた・・・。
第7話
コンサートを成功させピアノ講師に復帰した美璃は、携帯ショップのアルバイトを辞め、レッスンの空き時間に空のキッチンカーで働き始める。そして、空と一緒にいられる今を大切に見つめていこうとする。一方で空は、記憶を取り戻したことで、今まで感じなかった未来への不安や、また記憶を失ってしまうことへの恐怖を感じるようになる。美璃と共に生きる未来のために、ダブルワークを始める空に、無茶をし過ぎではないかと心配する保に、空は「記憶が戻ってから、楽しいことも多いけど、苦しいことも多くなりました」と告白する...。空の言葉に親身に耳を傾ける保だったが、その保にも大きな転機が訪れており...。そんな中、東京から美璃の母・ゆかりが訪ねてくる。美璃と一緒にいる空に訝しげな視線を送るゆかりだが、ゆかりが訪ねてきた本当の理由とは...。
第8話
ある朝、いつものようにキッチンカーに訪れた美璃は、空から他人行儀な笑顔と言葉を向けられる。車内の壁一面に貼られていた二人の思い出の写真もない。突然、空は再び記憶を失ったことを察した美璃は、恐れていたことが起きた絶望感に襲われる。ショックのあまり一日中家にこもっていた美璃の部屋に、空の異変を知った茜が訪ねてくる。そして、障害を抱えてこの先も生きていく空と付き合うかどうかは、美璃次第だと言われる・・・。この状況で美璃にとっての最悪は空が死ぬこと。その後美璃は、勇気を振り絞って空のキッチンカーに行き、改めて自己紹介をして、恋人に戻るのは難しくても、従業員としてここで働くことを伝えると、「一人のほうが気楽だから」と、空に拒絶されてしまう・・・。
第9話 最終回
「たとえあなたが私を忘れても、私はいつまでも、あなたを愛し続ける」美璃は、何度も傷つきながら、ようやく自身の心の核心にたどり着き、空との結婚を決意する。空もまた、記憶を失ってしまう恐怖を含め、生きている実感を与えてくれる美璃とともに、これからの人生を歩んでいく覚悟を決める。美璃たちの大胆な決断は、保や沙菜を驚かせるが、美璃と空の覚悟の深さを知った二人は、その想いを尊重し、門出の後押しをする。ところが、美璃の母・ゆかりは猛反対し、記憶を失う可能性のある空に結婚の責任は果たせないと言われ、二人は厳しい言葉で詰め寄られてしまう。一方、空の母・理佐子は・・・。
(ABCテレビ「たとえあなたを忘れても」より)
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