第1話
頭脳明晰で大胆な行動力を持つ上水流涼子は、多くの事件を担当する敏腕弁護士だったが、ある傷害事件をきっかけに弁護士資格を剥奪された。現在はIQ140の相棒・貴山伸彦とともに、「探偵事務所 上水流エージェンシー」で探偵業を営んでいる。ある日、松下祥子という女性が訪ねて来て、不動産ブローカーの神崎恭一郎(髙嶋政伸)から2000万円を取り返してほしいと依頼される。祥子によると2年前、神崎は松下夫妻が所有する土地と工場を汚いやり口で奪い、夫・昭二を自殺に追い込んだという。神崎の身辺調査をすると、妻・朱美と一人息子の克哉と暮らし、秘書の橘亜里沙をはじめ、複数の愛人を囲う生粋の遊び人だった。そして涼子と貴山が選んだ「あり得ない手段」とは・・・。
第2話
上水流涼子の元顧問先の大企業・諫間グループの社長・諫間が、突然、「仕事を頼みたい」と連絡してくる。涼子が弁護士資格を剥奪された傷害事件で、涼子の主張に一切耳を貸さず、真っ先に手のひらを返した諫間は、涼子にとって殺したいリストナンバーワンだった。しかし、受話器越しの声から何かを悟った涼子は、ひとまず諫間の元へ・・・。諫間の依頼内容は、一週間前から行方不明になっている娘の久実(白石聖)を探してほしいというものだった。警察に届けて大事になれば、会社の株価に影響するため、利益を優先して涼子を頼ったということだ。相棒の貴山は心底あきれるが、涼子は「連れ戻せたら報酬はいくらでも払う」という諫間の言葉に不敵な笑みを浮かべる。
第3話
「上水流エージェンシー」に、諫間の紹介だという本藤朝子がやって来る。建設会社の社長だった夫が2年前に他界し、息子の仁志が後を継いだものの、仁志は決断力に乏しく、事あるごとに会長である母の判断を仰ぐという。近頃では高円寺裕也という怪しげな予知能力者にも頼っていて、朝子は「息子の目を覚ましてほしい」と依頼する。仁志が、秘書の新井を伴い、高級クラブで高円寺と会うことを知った涼子は、ホステスに扮して潜入し、高円寺をそれとなく挑発すると、高円寺は自らの予知能力を見せると言い出し、店に入ってくる客の素性を次々に言い当てる。その能力に魅了された仁志は、高円寺を自社の経営コンサルタントに据えようとするが・・・。
第4話
ある日、久実が事務所のクローゼットで某有名美容クリニックのナース服を発見する。貴山の話では、記念すべき最初の依頼で使った衣装だというが、涼子にとっては思い出したくない過去だった。8カ月前、探偵事務所を立ち上げた涼子の元へ、弁護士時代の後輩が、依頼者・西田真紀を連れてやってくる。話を聞くと、額の大きなあざを消そうと、美容家・愛原樹里亜のマジェスティックビューティーラボで施術を受けるが、半年後、一度は消えたあざがひどくなったという。カルテに問題なく、治療が原因だと立証することは困難だったが、そのあざを元に戻すには、海外で整形するしかなく、真紀はその費用を樹里亜から奪いたいと涙をこぼす。涼子は、クリニックに乗り込んでみたが、樹里亜は弁護士資格を失った涼子をあざ笑い、挙げ句、元犯罪者呼ばわりされてしまうのだった。
第5話
8カ月前の依頼人自殺という結末が、涼子と貴山の胸に大きなしこりを残した。そしてその当事者であり、涼子が敗北を期した因縁の相手・愛原樹里亜が、「上水流エージェンシー」にやってくる。殺害予告ともとれる脅迫状が届いたとのことで、身辺警護と犯人特定を依頼される。自らの過ちを決して認めず、反省のかけらもない樹里亜の態度に、涼子は一旦断るが、高額な報酬を前に結局依頼を引き受けることに。ある日、ナースに扮した涼子が、樹里亜の身辺警護のために歩いていると、工事現場の鉄パイプが倒れてくる。涼子の機転で何とかかわせたが、樹里亜は脅迫状の一件を公にする。すると、人混みの中から作業服を着た一人の男が「悪魔!魔女!」と樹里亜に向かって罵声を浴びせる。
第6話
6年前、アメリカで暮らす貴山のもとに、母と妹が就寝中に家に火をつけられて殺害されたという知らせが届く。警察によると、犯人は当時外務省の官僚だった父・勇作の可能性があり、自らも火事に巻き込まれ、放火殺人の容疑をかけられたまま植物状態になっていた。貴山は、いつ意識が戻るか分からない父の看病を続け、涼子もまた、そんな貴山の過去を秘密裏に知り・・・。ある日、線路に転落して亡くなった夫の死の真相を調べてほしいという女性がやって来る。建設会社に勤務していた夫は、死の直前、「いつか俺は社長に殺されるかもしれない」と怯えていたというが、警察はこの証言に取り合わず、捜査も打ち切りになる。夫が勤めていた八雲建設の社長・八雲治は、アジアの途上国へ多額の寄付をするなど、慈善家として知られる人物だったが・・・。
第7話
ある日、上水流エージェンシーのアカウント宛てに「誘拐事件を解決してほしい」というメールが届く。依頼主は、有名なインテリアコーディネーターの石原歩美と、夫で経営コンサルタントの啓士。娘の星名が誘拐され、身代金の要求はないが、警察に通報したら殺すと脅迫されているという。家のいたるところに監視カメラが仕掛けられていて、夫婦の行動や会話は犯人に筒抜けらしい。涼子と貴山は、動物病院のスタッフに扮し、愛犬を診察するフリをして石原家に潜入。歩美と啓士を誘導し、犯人の目が届かない場所を探していると、監視カメラが設置されていない部屋があり・・・。そんな中、啓士のスマホに「イマスグ、ホームパーティーヲシロ」というメールが犯人から届く。
第8話
ある日の晩、丹波が居酒屋で一人酒を飲んでいると、涼子が見知らぬ男と親しげに話している姿を目撃し、ショックを受ける。翌朝、久実と貴山に相談に行くと、久実は涼子に彼氏ができたのではないかと言い出し・・・。涼子によると、一緒にいたのは高校の吹奏楽部の後輩・新藤達也で、銀行勤めで都心にマンションを所有しているという。涼子は「弟みたいなもん」と、恋愛感情がないことを断言するが、不安が拭いきれない丹波は、貴山に2人の関係を調べてほしいと依頼する。数日後、貴山と久実が尾行すると、涼子は女性らしい服装に身を包み、新藤と恋人同士のような時間を満喫していた。仕事中には見せない涼子の楽しそうな表情に、なぜか胸騒ぎがする貴山・・・。そしてある晩、涼子との食事を楽しんだ新藤を尾行した貴山は、彼が帰宅した家を見て違和感を抱き・・・。
第9話
涼子は、自らが引き起こし、弁護士資格を剥奪されることになった傷害事件の記憶を呼び覚ますため、被害者・椎名保に謝罪するべく、下町の小さなレンズ工場を訪れる。しかし、何度訪ねても椎名は会ってくれず、今回もまた、息子の孝に追い返されてしまう。事務所に戻ると、澤本香奈江という女性が、涼子の帰りを待っていた。香奈江は、5年前に離婚した元夫で整形外科医の安生健吾から10歳の息子の親権を取り戻したいという。息子の直人は安生と暮らしていて、保育士の香奈江には裁判費用を工面することができなかったため、これまで泣き寝入りしてきたという。香奈江の話では、安生には離婚前から女性の影があったといい、涼子はその真相を突き止めるため、患者のふりをした久実を安生のクリニックへ送り込む。
第10話
突如、涼子のスマホに送られてきた謎の動画に映っていたのは、うつろな表情をした涼子の様子だった・・・。「これから言う数字を聞いたあなたは、自分でも抑えきれないほどの怒りの感情が湧き上がってきます。その数字は・・・3776・・・3776・・・」映像の中の言葉で、涼子の脳裏には、椎名を殴ったあの日の記憶が鮮明によみがえる。改めて動画を見ていた涼子は、映像の中に見覚えのあるものを発見し、そこから、かつて自分の後輩だった弁護士に行き着き、8カ月前の知らなかった事実が明らかになって・・・。一方、貴山の前に再び氷川が姿を現す。かつての仲間を真っ向から拒絶するが、氷川がおとなしく引き下がるはずもなく、それどころか「ゲームを始めた」と不敵な表情を浮かべ、「俺の仕事を手伝え」と交換条件をつけて脅しをかけてくる。
第11話 最終回
涼子が弁護士だった頃、催眠をかけるよう依頼し、法曹界から追放した黒幕は諫間だった。理由が分からず、納得できない涼子は、諫間グループの顧問弁護士だった頃のことを思い返す。すると、諫間が、負債を抱えた技術系の小さな会社と合併しようとし、それに反対してもめたことを思い出す。父の後を継ぎ、顧問弁護士として2代にわたって会社を支え、信頼関係を築いていたことから、その程度のことで諫間が自分をおとしめるはずがないと話す涼子。もはや本人に聞くしかないと考えた涼子は、貴山を連れて諫間の元へ向かう。嘘であってほしいと願う涼子に、諫間は驚くべき言葉を口にし、諫間の胸の内と傷害事件の真相を知ることになる。そんな中、椎名が拉致・監禁されるという新たな事件も勃発!
(関西テレビ、月10ドラマ「合理的にあり得ない」より)
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