第1話
大手広告代理店に新卒で入社するが、パワハラが原因で3年たらずで辞めてしまった未谷千晴(小芝風花)。ある晩、中年の男がナイフを手に、杖をついたスーツ姿の男を襲撃する現場に出くわす。2人は顔見知りのようで、スーツ姿の男が表情ひとつ変えず冷静に男を取り押さえる。一部始終を目撃して心配する千晴に、「人の心配より、ご自分の心配をしたらどうですか?未谷千晴さん」と、男はなぜか初対面の千晴の名前を知っていた。翌日、千晴は、叔母の落合洋子(石田ゆり子)が社長を務める転職エージェンシー「シェパードキャリア」を訪ねる。洋子は早く再就職したい姪っ子のために「転職の魔王様」の異名を持つ優秀なキャリアアドバイザーを担当につけたと言い、そしてそこに現れたのは、前夜に出会った謎の男・来栖嵐(成田凌)だった。来栖は、「とにかく履歴書の空白期間を埋めたい」と焦る千晴の気持ちを見抜き、言葉遣いこそ丁寧だが、心をえぐるような辛辣な言葉を投げつけ、「社長の姪だからって、忖度してもらえると思いましたか?」と冷淡な口調で千晴を突き放すのだった。
第2話
千晴は、転職活動を一時休み、叔母の洋子が社長を務める転職エージェントで、キャリアアドバイザーの見習いとして働くことになった。指導係である来栖とともに臨んだ最初の面談相手は、大学を卒業して10年間、派遣社員として働いてきた宇佐美由夏。正社員として転職を考えているというが、転職の動機や希望の職種、年収についても主張が少ない。来栖は由夏に厳しい口調で毒づき、更に、そのやり方に異を唱えた千晴に、由夏の担当を任せると言い出す。その晩、由夏は恋人の渋井克行と馴染みのレストランで食事を楽しんでいた。由夏が転職の条件にこだわりを持っていなかったのも、近い将来、克行と結婚すると考えていたためだった。しかし克行は、自分がフリーランスで働いているため、非正規雇用の相手との結婚は考えられないという・・・。
第3話
大手食品会社に勤める笹川直哉は、健康食品部門の営業として働く入社4年目。上司の無茶な要求に応え、取引先との接待では若手として気を配り、場を盛り上げるために身を削ることも少なくないが、自らの仕事にやりがいを感じ、会社の利益につながる働きをしていると言う。しかし、会社はそんな仕事ぶりを正当に評価してくれず、次第に不満を感じるようになった笹川は転職を考えるのだった。来栖と千晴は、笹川と面談するが、営業の鏡ともいえるほどに明るく前向きな笹川に好印象を抱き、企業が欲しがる人材だと確信するが、来栖には一つ気になることが・・・。来栖によると、笹川は上司にウケのいい人間を演じていて、笹川を「厄介かもしれない」と懸念する来栖の言葉に対し、その意味が分からない千晴・・・。
第4話
来栖の元恋人・剣崎莉子が、突然「シェパードキャリア」にやって来た。転職の相談ではなく、別れた後、どうしているか気になっていた来栖をSNSで見つけて、会いにきたようだ。しかし、久しぶりの再会を懐かしむどころか、互いにトゲのある言葉を連発し、一触即発のムードに。ところが翌日、莉子から正式に面談の申し込みが入る。莉子が勤める会社は、オンラインの教育系コンテンツを制作・配信していたが、この一年、業績が悪化していた。プライベートでは漫画家の恋人・綾野周介と同居している。周介は、才能はあるがなかなか芽の出ず、更に漫画に集中できるよう、自分が好条件の会社に転職して支えたいという。だが、今の会社で誇りと愛情を持って仕事をしていた莉子を知る来栖は、その転職理由がどうも腑に落ちない・・・。
第5話
もうすぐ試用期間が終わる千晴は、洋子から戸松卓郎という求職者を一人で担当するよう言われる。戸松は28歳の若さにして、すでに3つの会社を退職していた。千晴は早速面談に臨むが、戸松はどこか投げやりで、度重なる転職が自身のキャリアにとってマイナスになることも自覚していた。それでも、戸松の退職理由を聞いた千晴だが、「仕事に変な夢とか持ってない」と冷めた様子だ・・・。困った千晴は思い切って来栖に相談するが、来栖は「手を貸すことはできない」と感情的な態度を見せ、千晴や広沢を驚かせる。後日、戸松は千晴が紹介した会社の面接を受けるが、ネガティブな言動と自己肯定感の低さが目立ち、不採用になる。千晴は、戸松が成功や幸せから遠ざかろうとしているように感じ、理由を教えてほしいと頼むが、その声は戸松の心に届かなかった。
第6話
「シェパードキャリア」で働くうちに、キャリアアドバイザーの仕事にやりがいを感じ、働くことに意味を見出した千晴は、晴れて正社員になる。その直後、これまで6回の転職を経験している転職王子こと八王子道正から、面談の申し込みが入る。過去に彼を担当した広沢は何やら苦い経験があるようで、今回の担当を辞退したため、来栖と千晴が担当することになる。八王子は、不動産会社でマンション販売を担当し、幾度となく売り上げトップで表彰され、自他ともに認めるトップセールスマン。17年目となる不動産営業の仕事は天職だが、一つの会社に留まることが性に合わず、現在の会社も勤務3年目にして飽きてしまったという。来栖は「まるで戦場を渡り歩く傭兵ですね」と、八王子に皮肉めいた一言を放つが、自分の実績と能力に絶対の自信を持つ八王子は、怒るどころかまったく気にしない。
第7話
千晴は、来栖とのコンビを一時解消し、家の事情でしばらく残業ができない広沢をフォローすることになった。2人は早速、8年間勤めた製薬会社を退職したばかりの皆川晶穂の面談に臨む。晶穂が希望する条件は、十分な人員が確保された会社であること。以前勤めていた会社は人数が少なかったため個人の負担が大きく、激務が当たり前だったという。千晴は、求職者に寄り添い丁寧にアドバイスする、広沢のやり方に感激するが、後日、晶穂は広沢を担当から外してほしいと申し出る。心当たりのない広沢はショックを受け、千晴はそんな先輩のために自分ができることを模索する。見かねた来栖から、必ず何か原因があるはずだと言われ、面談中の様子を思い返した千晴は、広沢に子供がいると知ったとき、晶穂の態度が少しおかしかったことを思い出す。
第8話
天間が初対面の来栖に「あなたに、お会いしてみたいと思ってました」と意味深な言葉を投げかけられる。そして、しばらくたったある日、来栖と千晴は新規登録者でフリーライターの石岡遥太の面談を行うため、カフェに呼び出される。石岡は、手間を省くために別の大手転職エージェントの担当者も呼んでいると言われ、まるで2社が対決するような状況に戸惑う千晴。すると、そこへ同業者であることを千晴に隠していた天間が現れる。28歳の石岡は、大学卒業後からフリーライターとして活動し、有名メディアへの掲載実績もあることから自己評価が高く、正社員になるのは自らの市場価値を更に高めるためだと豪語する。しかし来栖は、実績に自信がある石岡を「正社員になりたいフリーターとして選考される」と未経験者扱いし、怒らせてしまう。一方の天間は、来栖の意見に一定の理解を示しつつも、石岡の考えを尊重し、プライドを傷つけない巧みな話術で希望条件を広げていく。
第9話
洋子の電話に求職者・五十嵐君雄の両親から連絡があり、青ざめた表情でオフィスを飛び出し、君雄の自宅へ向かう。10年もの間、自室に引きこもっている息子が命を絶つかもしれないという両親からのSOSだったが、洋子がドア越しに声をかけると幸いにも君雄は無事。しかし、洋子に対しては「帰ってくれ」の一点張りで・・・。事務所に戻ると、ただならぬ様子だった洋子を心配した来栖と千晴が待っていた。以前から、転職活動をした記録がない五十嵐君雄の存在が気になっていたという来栖に、洋子は君雄と恋人だった過去を打ち明ける。13年前、旅行代理店に勤めていた洋子は、小学校教諭だった君雄と知り合い、恋人関係に。結婚も考えていたが、ある日突然、君雄は辞職し、理由を明かさないまま洋子に別れを告げ、自室に引きこもるようになった。洋子は、いつか君雄の社会復帰の足がかりになればと「シェパードキャリア」を立ち上げたのだった。
第10話
「シェパードキャリア」の大阪支社設立が決まり、社長の洋子は、その立ち上げを来栖に任せる。早速、来栖は下見のために出張し、千晴はこれを機にひとり立ちすることに。来栖の不在に不安を感じていたものの、天間のサポートのもと面談に臨んだのは、大手レストランチェーンに勤務する矢吹健一で、妻と2人の娘との将来を考え、給料を今の2倍にしたいという。難しい条件だったが、家族思いの健一にほだされた千晴は、横山を巻き込みあるスキルに長けている健一に、異業種への挑戦を提案する。千晴に背中を押された健一は、早速面接を受けたいと意気込むが、実は転職の話は妻の江美里には内緒だった。転職先が正式に決まってから伝えて喜ばせたいというが、後にそれが家族間に大きなひずみを生むことに・・・。一方、大阪にいる来栖から千晴に電話が入る。引き継ぎの名目だったが、内心では千晴のことが心配で、千晴もまた、そんなツンデレ魔王様の気持ちがうれしく、健一の一件が順調に進んでいることを得意げに報告する。そんな楽しそうな千晴の様子を離れた場所から天間が見ていて!?更に、来栖と千晴の知られざる過去のつながりが明らかになる!
第11話 最終回
ある日、来栖の商社マン時代の同期で、エネルギー開発事業を専門に扱う商社に転職した児玉雄一郎が、「シェパードキャリア」にやって来て、「俺と一緒にアフリカで働こう」と来栖をスカウトする。会社は来栖のハンディキャップにも理解を示していると言われ、一度あきらめた夢を再び追いかけられるチャンスに、来栖の心は揺れ動く。そんな中、以前に来栖が担当した滝藤航平が、学生時代からの夢である広告プランナーの職に就きたいと相談にやって来る。3年前、広告代理店への転職がかなわなかった滝藤は、広告宣伝に力を入れる大手食品会社に入社するも、現在は販促イベントの雑務を担当しているという。「可能性がゼロではないなら、夢を追い続ければいい」と言う、来栖の言葉が忘れられず、再び夢に挑戦しようとする滝藤に、自分の姿を重ねてしまう来栖・・・。一方千晴は、難易度の高い滝藤の転職を後押しした来栖に、違和感を覚えていた。そこへ再び児玉がやって来て、千晴は事故にあう前の来栖が夢を追いかけ、笑顔で働いていた話を聞かされ、児玉から来栖の説得を頼まれる。来栖はもう一度夢を追いかけるのか、それとも、キャリアアドバイザーとして求職者の転職をサポートする道を選ぶのか!?
(関西テレビ「転職の魔王様」より)
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