「HOPE」
一ノ瀬歩は幼い頃に囲碁に出会い、プロ棋士を夢見て、それからの時間すべてを囲碁に捧げてきた。
しかし高校生のころ、父親が病気で他界。母子家庭となり、家計を支えるため、一ノ瀬は高校を卒業したら働きに出ようとする。
そんな一ノ瀬に母親は自分が働くからと、囲碁を続けるよう応援する。
高校を卒業した一ノ瀬は、大学へ進学せず、アルバイトをしながらプロ棋士を目指すも、もう一息のところで試験に落ち続けている。
プロ棋士採用試験には23歳未満の人しか受けられない、という年齢制限があるため、22歳になった一ノ瀬は、これが最後のチャンスと、不退転の決意で囲碁に励む。
しかし、プロ棋士採用試験前日の夜、母親が過労で倒れる事態が起こり、一ノ瀬も試験に落ちてしまうことに…。
囲碁の道が閉ざされ、失意のままアルバイトに明け暮れる日々を過ごす一ノ瀬。
その姿に胸を痛める母は知人に頼み、とある総合商社で最終段階をむかえている採用試験を一ノ瀬が受けられるようにする。
試験内容は1ヵ月のインターンシップ。研修生として実際に働き、その働きぶりを勘案して、採用の可否を決めるというもの。
舞台は総合商社。英語はもちろん何ヵ国語も話せて当たり前、特殊な貿易用語が飛び交う世界で、満足な社会経験も学歴もない一ノ瀬は、コピーの仕方すら分からず、打ちのめされる。
同期のインターンからは「高卒」「コネ」と爪はじきにされ、上司からは早々に「戦力外」の烙印を押されてしまう一ノ瀬。
しかし、囲碁も無くなった自分が、ここで逃げたら、本当に何も無い人間になってしまうと戦うことを決意する。
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