第1話
公家の姫・五十宮倫子は、徳川家治との婚儀を控え、付き人のお品(西野七瀬)と共に支度に追われていた。倫子は幼い頃に一度だけ会った家治が蛇のように冷たい目をしていたため、この婚儀に気乗りではないとお品に話す。準備が整い、大奥総取締役・松島の局(栗山千明)に導かれ、婚儀の間へ。居並ぶ重鎮や奥女中たちが一斉に自分に平伏すと、そこに家治が威風を帯び、現れる。だが、家治の目がやはり冷酷に見える倫子は目を合わすことができない。田安宗武(陣内孝則)と松平定信(宮舘涼太)が顔を出し、定信は倫子に、これから暮らす大奥は、その地位を妬み追い落とそうとする者もいると忠告し・・・。また、倫子には、京の頃より仕えるお品がいるのだが、松島はお知保(森川葵)を付き人にと言いだし・・・。一方、家治の父で第9代将軍・徳川家重(高橋克典)は家治の婚儀に顔を出すこともなく、女中を侍らせて酒を飲んでいた。
第2話
倫子は信通に大奥から逃げる手助けを依頼するが、返書で信道が倫子の姉と結婚したことを知り、お品の腕の中で泣き崩れる。そんな倫子とお品に、松島の局やお知保たちはさまざまな嫌がらせを続ける。一方、徳川家治は田沼意次を老中首座に任命する。田沼と松島は、倫子が世継ぎを身籠る前に、家治に自分たちの息のかかった側室をあてがうべく密談していた。そんな中、高岳たちが御台様に上様の御渡りがないとうわさ話に興じていると、それが倫子たちの耳に入る。倫子は「そのようなことでしか人の価値を測れないなど、哀れな方たち」と高岳たちに告げるが、大奥は将軍家の子孫繁栄のための場所なので、勤めを果たせず妻と言えるのかと反論されてしまう。ある日、お品はお知保から松島に届けて欲しいと言われ箱を預かる。その箱を松島が確認すると、中に入っていた焼き物が割れていたのだ。お品は自分の過ちではないと伝えるが、聞き入れてもらえない。松島は、女中たちに新しい懐紙入れを支給する経費を賄うため、焼き物を金に替えるつもりだったと告げ、お品に暇を取らせるしかないと言い出す。すると倫子は、経費分を賄えばいいのだろうと、懐紙入れを自分たちが作ると返すが・・・。
第3話
五十宮倫子の付き人・お品が、昨晩の御渡りについて問いかけると、倫子は「何もなかった」と口にし、徳川家治のことがよく分からないと話し出す。家治に抱かれなかったことで高岳ら女中の間で添い寝姫とあざ笑われ、それをお品が怒ろうとするが、倫子に制される。倫子はお品にこの先自分の身に何があっても言い返してはだめだと命じており、倫子はお品が酷い目に遭って欲しくなかったのだ。そんな中、倫子が家治と仏間で手を合わせていると、松島が口を開き、倫子の目の前で家治に側室を設けるよう迫ったのだ。だが、家治は「側室は必要ない」と返す。倫子から次第を聞いたお品は、女中たちのうわさとして家治の父・徳川家重と母・お幸の方に関する悲しい過去を話す。松平定信は、家治が世継ぎを望まぬという話や、田沼意次の言いなりになっている事を父の田安宗武に告げると、宗武は、いいことを思いついたと不敵な笑みを漏らし・・・。
第4話
倫子は、お知保が家治の側室になったことを聞かされ動揺する。家治が田沼意次の企てであることを知らない倫子は心中穏やかではない上、早速御渡りがあると聞かされ、更にショックを受ける。そんな中、増上寺代参が行われることになる。松島の局は「忙しい上様、御台様に代わって、奥女中たちが代参を務める」と切り出すが、倫子は御台所の大事な公務であるとし、自分も参ると告げる。松島は前例がないことだと反論するが、家治は倫子に「頼んだ」と言い、代参を認める。倫子がお品を伴って無事に参拝を終えると、猿吉が倫子の好物である白みそ煎餅を持って現れる。それは、お品が葉山貞之助に頼み、特別に作ってもらったものであった。倫子が茶屋で休んでいると、松平定信に声を掛けられる。そこで、定信から賢丸という幼名を聞いた倫子は、定信が幼なじみであったことを思い出し、二人は幼い頃に戻ったかのように、江戸の町を散策して楽しんでいたが・・・。
第5話
倫子は、家治が側室のお知保へ御渡りしたことに、つらい思いを募らせていた。そんな中、家治はオランダ商館長を江戸城に招く折、もてなしに琴を披露したいと告げ、多くの者が名乗り出る中、「御台はどうだ」と促す家治にも倫子はうつむいたままだった。松島の局の推挙もあり、お知保が名乗りをあげたことで、琴の演奏はお知保に任されることに。琴なら倫子も得意だと悔しがるお品だが・・・。お品は倫子が優しすぎると猿吉に愚痴をこぼしていると、葉山貞之助が通りがかり、お品にもっとゆっくり話がしたいと蔵の鍵を渡し、そこで待っていると告げる。暗い過去を持つ家治を脅して政治の実権を握ろうとする田沼意次は、武家伝奏に久我信通を就任させた。信通の姿に倫子は動揺し、そして家治も信通が倫子の手紙の相手だと気付く。田沼が倫子と信通は知り合いだろうと言うと、家治は、知り合いならこの後二人で話すが良いと口にする。倫子と話す機会を得た信通は、倫子に彼女の母親が病に伏せっていることを話し、一緒に京に帰らないかと倫子に告げる・・・。
第6話
倫子は、打ち掛けの裾を踏まれて倒れてしまったお知保に慌てて駆け寄り、女中たちを糾すが、逆に家治の子を宿せぬことを揶揄されてしまう。騒ぎの中、やってきた家治は次第を聞き、松島の局にしかるべき処分をするよう命じる。倫子は家治の御渡りはあるものの、一向に妊娠の気配がなく焦っていた・・・。「そんなにお子が欲しいのですか」と問いかけるお品に、倫子は家治と家族を作り、愛する人の子を自分の手で育てたいと返す。倫子のために、お品は蔵で倫子の食事について葉山貞之助に相談し、それぞれに蔵を出るお品と貞之助の姿を朝霧に目撃されてしまう。ほどなくしてお知保は家治の子どもを出産。倫子は、お知保に祝いを述べるが、家治は子に会っていないと言う。その頃、療養中の田安宗武のそばには、心配そうに控える松平定信がいた。そんな定信を近くに呼び寄せ、宗武は耳元で何かを囁く・・・。
第7話
倫子に子ができなかったのは、お梅が子をできにくくする薬草が入ったお香が原因ではないかとお品が告げる。命じた者を探ろうにも、肝心のお梅が姿を消してしまっていたが、お梅を動かしていたのは松平定信だったことが判る。倫子が倒れた件について、家治は「誰の仕業か調べはついたのか」と田沼意次に問いかける。田沼は松島の局ではないかと注進するも、家治は自らこの件を調べると言い放つ。家治の子である竹千代の教育係となり大奥、更には幕政を操ろうとする松島から裏切られた田沼は、高岳一派に接近する。そんなある日、倫子は料理の味が変わったのではないかと口にする。お品は倫子の料理を全てこしらえていた葉山貞之助がお休みを取られているようだと返し、真面目な貞之助が倫子に与えられた役目を投げ出すわけがないと心配する。
第8話
急に産気づいた倫子だが、子を産むにはまだ早い時期だった。倫子を心配し、家治が駆け、倫子に手を伸ばすが、その手を倫子に退けられてしまう。そして倫子は子を出産するが、悲しいものとなってしまった。その頃、松平定信は隠密を相手に将棋を指し、「最初にあらゆるものを奪ったのは、あの男だ」と漏らす。家治の血を根絶やしにして、自らが幕府の中枢に就くことへと向いていた。そんな折、お品が懐妊し、お品の子を将軍世継ぎにせんとする田沼意次と高岳の意気は上がる。一方、竹千代を愛でるお知保は、傷心の倫子を気にしていた。家治も倫子に会いに行くが、倫子は今は一人にしておいてほしいと、深い悲しみに暮れていた。そんな倫子に、定信から贈り物が届き、それに文が隠されており、倫子を元気付けんとする内容だったが、定信は新たな企てを仕掛けようとしていて・・・。
第9話
倫子は家治に挨拶をして増上寺へ出かけるが、どこかよそよそしい。倫子が門を出て行く様子を猿吉が物陰から見送っていた。松平定信と浜御殿で会った倫子は、文や贈り物で自分を励ましてくれた礼を述べる。定信は世継ぎがお知保の子・家基に決まったことで大奥も安泰だと口にする。その頃、田沼意次は高岳から、お品の子・貞次郎が世継ぎに指名されなかったことを責められ、どうするのかと問われた田沼は「家基に消えていただくしかない」と答え・・・。倫子は、定信のおかげで楽しいひとときを過ごした帰り際、定信は倫子に自分ならつらい思いをさせないと告げ、思わず抱きしめる。そして、倫子たちが大奥に戻ると、女中たちが何やら騒いでいて・・・。
第10話
倫子は、家治から「わしは、将軍家の子ではない」と自身の秘密を打ち明けられ、田沼にこの秘密を握られ、言いなりになるほかなかったと聞かされる。困惑する倫子だったが、そんな中、家治は体調を崩してしまう。田沼はお品の子、貞次郎を世継ぎに指名することを家治に迫るが、家治は将軍家の血を引かない自分の子でよいものかと苦悩する。更に、田沼は、大奥総取締から松島の局を追い落とし、自分の意のままになる高岳を据えようとする。松島は、家治の見舞いに行ったとき、倫子との会話を聞いてしまったことを話すと、家治は、その話は聞かなかったことにしてくれと松島に頼み込み・・・。一方、倫子のもとに定信から贈り物が届き、中にはいつものように文が隠されていた。その文には、驚くべき内容が記されていて・・・。
第11話 最終回
倫子は、松島から家治が倒れたことを聞かされ、高熱にうなされる家治の容体を、御匙が必死に診ていた。松平武元から家治の子細を聞いた定信は、ようやく自分たちの出番がきたと笑い、定信は新たな手立てを思いついたと言う。そんな中、浅間山が噴火し、江戸の町にも黒い雪のような火山灰が降り、倫子も不吉な予兆を感じずにはいられない・・・。家治は、この事態を何とかせねばと考え、自ら蟄居閉門を命じた田沼を呼び寄せる・・・。
(フジテレビ「大奥」より)
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