第1話
病院内で起こる患者同士のトラブル対処やクレーム対応、落とし物管理などを担う民間組織「院内交番」。阿栖暮総合病院内に設置された院内交番には、室長の横堀仁一と元警視庁捜査一課の刑事・武良井治が所属していた。ある日そこに交番事務員として川本響子がやってくる。そんな中、阿栖暮総合病院が誇る若き天才外科医・榊原俊介がドイツから帰国し、帰国直後にも関わらず難易度の高いオペを執刀し、素早く正確な技術を披露して周りの医師をうならせていた。武良井は、川本と共に院内のパトロールに出かけると、山際修平という男が入院中の妻の検査の件で医師ともめている姿を目撃する。目的がわからない検査が続いていることに納得出来ないらしい。応対していた内科医は、高名な榊原が手術をするから安心してほしい、と山際を説得するが・・・。
第2話
院内刑事・武良井治は、交番事務員の川本響子とパトロール中、とある病室の入り口に盛り塩があることに気づく。病室の中をのぞくと、入院患者の清宮松雄が他の患者たちに囲まれていた。昨夜、トイレに行った清宮は、長い髪の女性の幽霊に遭遇し、武良井たちに「トイレに行けなくなるから何とかしてほしい」と頼む。同じ頃、外科の術前カンファレンスが行われている会議室で、外科医の上條萌子が、外科部長の倉田雄二に食ってかかっていた。萌子は、悪性心膜中皮腫という症例の患者の手術を担当することになっていたが、前日になって降ろされたのだ。代わりに執刀するのは、榊原俊介で、「毎回、榊原先生にオペを奪われていたらこの病院の外科医は育たない」と主張する萌子。そんな中、阿栖暮総合病院に国会議員の岩井幸吉が体調不良のため特別室に入院することになった。岩井は、あるNPO団体への暴言で批判を浴びて炎上中であることから、追求を逃れるための入院らしい。倉田は、武良井に岩井の警護を命じると、主治医には萌子を指名し・・・。
第3話
阿栖暮総合病院の院内交番に、整形外科の看護師・白石日向が「飯塚恵子という入院患者がいなくなった」と駆け込んでくる。医材の在庫チェックを頼まれていた交番事務員の川本響子は、室長の横堀仁一にそれを押しつけると、武良井治とともに整形外科へと向かう。その頃、外科医の榊原俊介は、外科部長の倉田雄二から「薬王ホールディングス」社長の手術を命じられる。患者は院長と大学時代の同期で、翌月に予定されている娘の結婚式でバージンロードを一緒に歩きたいと願っているのだという。ほどなく飯塚は見つかったが、日向は病棟を離れたことを先輩看護師の神谷玲子から厳しく注意されてしまう。日向が業務に戻ろうとすると、ポケットからメモ紙が落ち、それを拾い上げた武良井から奪い取ると、急に呼吸が荒くなってその場に座り込んでしまう。武良井たちは心配するが、日向は大丈夫だと告げて業務に戻る。そんな中、院内交番に麻酔科医で日向の姉でもある白石葵が訪ねてくる。日向は、3ヵ月ほど前から仕事のことを話さなくなり、最近は家にも帰ってこなくなり、整形外科で何か嫌な思いをしているのではないかと心配していた・・・。
第4話
武良井治は、看護師の白石日向から、阿栖暮総合病院を半年前に辞めた循環器内科の専攻医・前川大樹の話を聞く。前川は5年前に阿栖暮総合病院に臨床研修医としてやってきた、明るくて勉強熱心な医師だったが、この病院で亡くなったコメンテーター・乾井卓の死に関わっていた。乾井は大腿骨頭置換術を受けたが、術後に胸の苦しみを訴え、担当の整形外科医・久保田雅人は原因を探るために前川に相談した。前川は、急性心筋梗塞を疑うと同時に、術後であることから肺塞栓でないことを確認しておいた方が良い、とアドバイスする。だが、容体が急変した乾井は、榊原俊介の執刀で手術を受けたものの、術後すぐに死亡していた。日向は、武良井に乾井のカルテを見せると、冠動脈造形の結果も手術記録も残っていないのはおかしいと指摘し、乾井が亡くなった直後に前川が退職したことも気になるという。川本響子は、病院の隠蔽を疑う武良井に、不正を暴こうとするのは院内交番の仕事ではないと言って反対するが・・・。
第5話
院内刑事の武良井治は、医療安全管理委員会に乗り込み、半年前にこの病院で亡くなったコメンテーター・乾井卓に関して、医療ミスがあったのではないかと問いかけた。武良井は、乾井の死と同時に辞表を提出して病院を辞めた循環器内科の専攻医・前川大樹を呼び寄せ、証言させた。前川は、乾井の死因は肺塞栓だったが、上司の高木学から乾井の妻・君子には心筋梗塞だったと説明するよう、命じられたと証言する。その発言を受け、乾井の執刀をした榊原俊介は、何があったのかすべて話すと武良井たちに告げる。あの日、前川は、乾井が大腿骨頭置換術を受けた後に胸の苦しみを訴えたことを受け、君子に心筋梗塞の可能性が強く、カテーテル検査が必要であることや、致死的な不整脈や脳梗塞などの合併症の可能性があることを説明した。その後、バイタルは落ち着いたものの、肺塞栓の可能性を疑う前川だったが、高木は、Dダイマーが陰性であることから肺塞栓はないと言って様子を見るよう指示する。そこで前川は、榊原に事情を伝えて所見を求めると、榊原は「実際に患者に触れ、真摯に診た前川先生の見解が最も信頼に足る」と返す。そんな中、乾井が再び苦しみ始め、前川は、高木の指示を無視して検査を始めようとしたが・・・。
第6話
手術を終えたばかりの上條萌子と白石葵が、院内交番にやってくる。榊原俊介が執刀したオペに加わっていて、トラブルが起きても動じず、的確に対処していく榊原の技術を目の当たりにしていた。その話を聞きながら、「武良井くんは、恋人の死に榊原先生が関係していると睨んでいる」という室長・横堀仁一の言葉を思い出す川本響子。その夜、武良井は、横堀とともにサウナ施設で警視庁捜査一課長の城川尚と会い、恋人だった夏目美咲の死に関して、これまでにわかったことを報告する。胃がんのステージⅣだった美咲は、新薬の治験に望みを託していたが、治験に参加した2ヵ月後、突如原因不明の間質性肺炎を発症し亡くなっていた。現在この治験に参加している患者80人中、5人に間質性肺炎の所見が出ていて、美咲の他に60代の男性が間質性肺炎で亡くなっていた。武良井は、そうした状況下でも治験が継続されていることを問題視し、副作用によるものと疑われる症例が発生しても、製薬会社や病院側が国や治験審査委員会へ報告を挙げなければ闇に葬ることができると城山に告げる。その新薬の治験責任医師は、榊原だった。
第7話
恋人の美咲の死に関して、ある疑惑を探っていた院内交番の武良井は、室長の横堀とともに、警視庁捜査一課長の城川と再会する。ステージⅣの胃がんだった美咲は、抗がん剤の新薬の治験に参加した2ヵ月後、突如原因不明の間質性肺炎を発症し亡くなり、その新薬の治験責任医師は榊原だった。城川によれば、製薬会社側も治験患者が間質性肺炎で相次いで亡くなっていることを把握しており、調査を始めたらしい。武良井は、美咲の日記を読み直し気付いたことは、亡くなった患者たちは、肺炎の症状が出たことを黙っていたのかもしれないと城川に告げる。一方、病院内で倒れた14歳の少女・今井結依は、HLHS(左心低形成症候群)という先天的な疾患があったため、入院することになった。武良井は、結依に頼まれて彼女を病院の屋上に連れて行くと、結依は、阿栖暮総合病院に来たのは、母親が榊原を頼ってのことだと話す。榊原は、二人の会話を偶然聞いてしまい、妹の希のことを思い出す。そんな中、入院患者の清宮松雄が退院することになり、退院報告を受け喜ぶ川本たち。すると清宮は「頼み事がある」と言って、武良井に人探しを頼む・・・。
第8話
武良井は、勤務中にもかかわらず、当直室で不倫行為をしていた男性医師に証拠写真を突きつける。武良井は、その医師が病院と製薬会社の取次役だという情報を得ていて、兼ねてから捜査していた治験に関する情報と不倫の証拠写真破棄を交換条件として出す。一方、榊原は他界した妹と同じHLHS(左心低形成症候群)の少女・今井結依が親しかった入院患者・清宮松雄の死にショックを受けていたため、励まそうと言葉をかける。。そんな中、院内交番に救急搬送されていた患者が行方不明になったとの連絡が入る。曽根崎茉莉という名前と特徴を聞いた川本は、「高校の同級生かも」と武良井とともに捜索を始め、病院近くの通りで倒れている茉莉を発見する。しかし、川本が知る茉莉とは正反対の痩せ細った体型をしていた。茉莉を診察した総合内科医の田尻賢太郎から診断結果の提供を断られた川本は、院内交番に与えられたアクセス権を利用して茉莉のカルテを検索すると、処方されていない食欲抑制剤や睡眠薬を大量摂取していたことが判った。院内交番室長の横堀は、田尻が生活保護者に睡眠薬ばかり処方していることが気になり、武良井に相談を持ちかける。それを知った川本は、この一件は自分が調べると言い出し・・・。
第9話
武良井治は、治験中に亡くなった恋人・美咲が服用していたのは治験薬ではなくプラセボ(偽薬)だった事が判り「俺が調べてきたことは全部無駄だったのか?」とショックを受ける。そして武良井は、調査を続けることで治験の邪魔になるかもしれないと考えていたが、川本は美咲が飲んでいたのがプラセボだったとしても、治験薬で副作用が出た患者のことをきちんと調査するべきだと主張する・・・。川本が昼食を購入して院内交番に戻ると、尼子唯織や上條萌子、白石葵らがくつろいでいて、阿栖暮総合病院で行われている治験には500億円もの開発費用が投入されていると聞かされる。しかしその治験薬によって、回復したという症例がいくつも出ているのだという。一方、外科医の榊原は、院長の武藤から、HLHS(左心低形成症候群)で入院している今井結依の手術を中止するよう命じられる。しかし、榊原は必ず成功させると反発し、外科医たちを集めるが、院長が反対しているオペとあって、どの医師もサポート役を拒否する。そんな中、萌子が自ら助手に名乗り出た・・・。
第10話
武良井治は、治験中に間質性肺炎で亡くなった3人目の患者が宮内香織という24歳の女性だったことを突き止め、しかも彼女のカルテには死因を改ざんされた跡があった。記録されていた更新者の名前は榊原俊介。武良井は、改ざんされたカルテを榊原に突きつけて問い詰める、と息巻くが、室長の横堀は、そんな武良井に、無茶をしないよう忠告する。一方、川本は、担当医の安原誠が何故カルテの改ざんに気付かなかったのかと疑問を抱く。しかし、安原は3ヵ月前から休職しており、閉塞性肥大型心筋症で阿栖暮総合病院に入院していて、現在は会話もできないほど病状が悪化しており、緊急手術になるという。執刀医は榊原・・・。そんな中、院内交番に上條萌子と白石葵が、安原の手術を控えていた榊原が突然姿を消したと駆け込んでくる。武良井は、川本とともに榊原の行方を追うが・・・。
第11話 最終回
武良井は、恋人の美咲の死は自殺だったと榊原から告げられる。病院の外階段から転落したことが直接の原因で、榊原が緊急オペを行ったものの、運ばれてきたときにはすでに手遅れだったという。しかし「美咲が自殺なんかするわけない」と、榊原の言葉を信じない武良井。美咲の死の事実を病院が隠蔽したのは、治験の副作用と転落死によって病院の管理体制を問われ、新薬の治験にも影響を及ぼすという理由からだった。武良井は、真相を受け入れられず、院内の監視カメラの映像を調べ直すと、廊下で胸を押えて苦しそうにしている美咲が、監視カメラの死角になる方向へと歩いて行く姿が映っていた。映っていた場所に立ってみた武良井は、美咲が向かった先に外階段へつながるドアがあったことを知る。そんなある日、切り裂かれた榊原の白衣がゴミ箱から見つかる事件が起こり、現場には口紅の痕が残されていた・・・。
(フジテレビ「院内警察」より)
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