第1話
大雨の中、逢原雨が重傷を負った朝野太陽を抱きしめ、助けを呼んでいる。するとそこに、あの世からの案内人を名乗る男・日下(斎藤工)が現れ「君が心を差し出すならば、今から奇跡を起こしてあげよう」と告げる。2013年の長崎。高校1年生の雨は、その名前から「ザー子」と呼ばれてバカにされ、自分に自信が持てないため、他人とは関わらないように生きていた。ある雨の日、傘を持っていなかった雨に、高校3年生の太陽が赤い折りたたみ傘を差しだし「もしよかったら、入らない?」と声をかける。雨は、太陽のことを最初は疎ましく思っていたが、明るくて真っ直ぐな太陽と接するうちに次第に心を惹かれていく。しかし、雨はパティシエの夢を叶えるために東京へ、太陽は家業で花火師の修行を積むことになる。それから10年、雨は長崎に帰省していた。太陽は、大晦日の花火大会を任せてもらえない事を不満に思い、父で師匠の朝野陽平(遠藤憲一)と衝突していた。そして太陽は、かつて思いを語り合った眼鏡橋で、赤い折りたたみ傘を取り出した雨の姿を見かける・・・。
第2話
雨は、太陽と高校時代以来の再会を果たすが、太陽が交通事故に遭ってしまう。その時、雨の前にあの世からの案内人を名乗る男・日下が現れ、雨が五感を差し出す代わりに、太陽の命を助けるという奇跡を提案する。そして雨は、太陽のためにその奇跡を受け入れる。最初に奪われる五感は味覚。日下は、雨の味覚はあと14日ほどで失われてしまうと告げ、奇跡のことや案内人のことは、太陽以外には口外してはならないと忠告する。もうひとりの案内人・千秋は、雨に、ひとりで乗り越えられるほど五感を失うことは簡単ではないのだから、太陽には正直に話すべきだと助言する。しかし雨は、真実を話せば太陽が自分を責めてしまうと言ってそれを拒否する。そして雨は、味覚を失う前に好きなものを食べよう、と食べ歩きに出かける。そんな中、週末に「長崎スイーツマルシェ」が開催されることを知り、そのゲストに招かれていたのは、かつて雨に「必要ない」と告げたパティシエの田島守で・・・。
第3話
冬の夜空を極彩色に染める「長崎ランタンフェスティバル」で、恋愛成就の願い事を書くとそれが叶うという「恋ランタン」。高校時代、雨は、太陽と「恋ランタン」の話をした際に、太陽には初恋の人がいたことを知って悔しがっていた。祖母の雪乃は「大事なのは最初の人になることじゃない」と言ってある助言をすると、雨は、長崎孔子廟まで全速力で走り、手に入れた「恋ランタン」にある願い事を書く。「味覚」を失った雨は、パティシエになるという夢が永遠に失われたことを痛感していた。雨は、雪乃から「健康な心と体があるうちはちゃんと働きなさい。時間を無駄にしたら勿体ない」と言われ、思わず「無駄になんかしてないよ」と反論してしまう。そんな雨に、日下は深夜0時に次に失われる感覚とタイミリミットが腕時計に表示されることを告げる。そして深夜0時。腕時計には「鼻」のマークと11日後の午後9時というタイムリミットが表示された。「視覚」や「聴覚」ではなかったことにホッとした、という雨に、日下は嗅覚はただ匂いを感じるだけのものではなく、もっと大切な意味があると告げ・・・。
第4話
2016年2月。卒業式を間近に控えた雨は、東京でひとり暮らしを始める準備のため、太陽と一緒にショッピングセンターに買い物に行き、太陽は、「卒業記念に何か欲しいものない?」と尋ねる。そして、良い匂いがするマーガレットの小さな花束を買ってもらう。太陽は、この花の香りをふたりの思い出の香りにしないかと雨に言う。2024年1月。太陽は、雨に自分の思いを告白したものの断られてしまい、ずぶ濡れで帰宅すると、妹の春陽や花火職人たちは、太陽が振られたことを知って驚いていた。雨は市役所職員の望田司に、自身は五感を失ってしまう珍しい病気で、すでに味覚がない、と打ち明ける。司は、「太陽にその話はしたのか」と問いかけると、雨は、「太陽のことが好きだから言うつもりはない」と答える。そんなある日、雨が庭の植物に水やりをしていると、祖母の雪乃が買い物から帰って来て、辛そうに腰をさすっている姿が気になり、声をかける。雨とともにその姿を見ていた日下は、五感のことは雪乃に伝えるべきではないかと告げ・・・。
第5話
雨は、太陽に「わたしのこと、もう忘れて・・・」と言って別れを告げた。味覚と嗅覚も失ってしまった雨は、案内人・日下の助言に従って、祖母の雪乃に五感を失ってしまうことを打ち明け、これから先のことを話し合おうと決意する。しかし、雨が帰宅すると、雪乃が腰を押えてうめいていた。病院に搬送された雪乃は、雨にガンであることを告白する。苦しいのはごめんだと抗がん剤治療も拒否してきた雪乃の余命はあと2ヵ月で、早ければ数週間の命だと宣告されているという。雪乃は、生きている間は雨の笑顔をたくさん見せてほしいと告げる。一方、太陽の父・陽平は、雨にフラれた太陽を励まそうと、亡き妻・明日香と出会ったころの話をし、フラれた男ができることは3つだけだとアドバイスする。雨は、もうひとりの案内人・千秋に、太陽のことを助けたように、雪乃も奇跡で助けて欲しいと頼むが、千秋は、奇跡は誰にでも起きるわけではないし、自分たちにも与える権限はないと返す。そこに日下が現れ、午前0時になったことを告げる。雨の腕時計に表示されたのは「手」のマーク。次に雨が失うのは「触覚」だった・・・。
第6話
雨は、太陽と付き合い始め、雪乃がガンで入院していることもあり、雨のことが心配になった太陽は、雪乃の家で彼女と一緒に暮らし始める。太陽は、雨に「これからは雨って呼びたい」と申し出ると、自分の名前が苦手な雨は、少し考えさせてほしいと返す。雨は、雪乃の部屋を掃除していて、古いボイスレコーダーを見つける。当時小学生だった雨は、雪乃とそのボイスレコーダーを使って互いにメッセージを録音し、声の交換日記をしていたことがあった。その時、雪乃が入院している病院から、容態が急変したとの知らせが入り、雨は病院へ駆けつける。すると雪乃は雨に、家に連れて帰ってほしいと頼む。雨は、病院から何かあっても責任は取れない、と告げられ悩むが、太陽から「大丈夫、俺もいるから」と励まされ、帰宅する。あと何日もつかどうか・・・そう感じていた雪乃は、雨にひとつお願いをする。それは、雨の母・霞美を連れて、最初で最後の家族旅行に出かけることだった。
第7話
雨が触覚を失うまでに残された時間はあと1日半ほどに迫る中、千秋は祖母の雪乃を亡くしたばかりの雨のことを気遣う。そして日下は、そんな雨に、「触覚が教えてくれることがあるはずだ」と告げる。雨は、太陽の家を訪れ、太陽の父・陽平や従業員たちから歓迎され、その席には司も招待されていた。「太陽の恋人・雨ちゃんの初披露だ」とはしゃぐ陽平たちとは裏腹に、太陽の様子がおかしいに気付く司。春陽は司に、「サッカーをやっているならミサンガを作ってあげる」と言って、雨にも手伝いを頼む。太陽が、席を外して外のベンチでビールを飲んでいると、司がやってきて「五感を失う病気がないなら雨の症状の原因は何だろう」とこぼす。司は、医師の友人の話として、「何らかの後遺症で感覚を失い、それを五感を失う病気だと思い込んでいるのかもしれない」と太陽に話す。その言葉を聞いて少し安堵する太陽・・・。
第8話
千秋から「今って何秒間だと思う?」と問われた雨は、わからないと首を振る。そして千秋は、それにはいろいろな説があるが、今は十秒間、というのが一番しっくりくると話す。この十秒間を精一杯、幸せに生きることだけを考えてみてはどうか、と助言し・・・。一方、太陽は司に、雨が触覚を失ったこと、そして、あとひと月で視覚も失ってしまうことを打ち明け、ちょうどその頃に行われる桜まつりで、雨に自分が作った最初で最後の花火を見てもらいたいと言う。太陽は、桜まつりが終わったら花火師を辞めて、雨を支えるために自宅でできる仕事があれば紹介してもらおうと考えていた。そんなある日、太陽は雨が睡眠導入剤を服用していたことを知り、ショックを受ける。千秋は、太陽が自分のために花火師を辞めると知ったら雨が悲しむと告げると、太陽は雨には言わないつもりだと返す。日下は、太陽の選択を否定するなど案内人としてあってはならないと千秋を非難した。太陽は、父親の陽平と妹の春陽に、今夜雨にプロポーズすると伝え、雨が五感を失ってしまうことを陽平たちにも打ち明けるが・・・。
第9話
雨は、太陽からのプロポーズを受け入れ、二人だけで結婚式をしたが、雨は二人で用意した婚姻届を出していなかった。あと1ヵ月で太陽の前から姿を消す決意をした雨は、その間だけ、太陽の奥さんでいたいと願っていた。太陽は、妹の春陽から、母・明日香の写真を渡される。父・陽平が、母の顔を知らない春陽のために、母・明日香の実家に頼んで送ってもらっていのだが、それを見て太陽は驚く。写真に写っていたのは、千秋だった。太陽は、雨に千秋の写真を見せると「これからは伝えたいことを伝えられるね」と喜ぶ。そこに案内人の日下が現れ、太陽が千秋のことを「母さん」と呼んだら、千秋は月明かりに溶けて消えてしまうと忠告する。一方、司は、春陽に会いに行き、雨が婚姻届を出していないことを伝えると、春陽は、雨から連絡をもらって知っていると言い、全部自分のせいだと続けた。司は、そんな春陽に、雨は桜まつりのころには視覚を失い、次は聴覚も失ってしまうと言い、伝えたいことがあるのなら、雨と意思の疎通ができるときにしておくべきだと助言するが・・・。
第10話
雨は、太陽から桜まつりの花火大会で打ち上げる花火の審査に、合格したことを聞く。トップバッターが太陽の父・陽平で、太陽はその次だという。大喜びした雨は、どんな花火にしたのかと尋ねると、太陽は、当日までのお楽しみ、としながらも、俺の人生で一番大切だった十秒間かなと返す。桜まつり当日。雨は、司に頼み、母・霞美が入院している病院まで車で送ってもらう。霞美は、やってきた雨が杖をついていることに驚く。雨は、触覚を失い、もうすぐ視覚も失ってしまうことを霞美に打ち明ける。雨のために何もできない、と泣いている霞美に、雨は「お母さんの笑顔が見たい」と頼む。花火大会の会場では、朝野煙火工業の面々が打ち上げの準備を進めていた。離れた場所でその様子を見つめていた千秋は、太陽の作った花火を見届けることができたらもう思い残すことはない、と日下に伝える。雨は、霞美と別れて司とともに花火大会の会場へと向かうが、会場では、しだいに分厚い雲が広がり、強い風が吹き始めていた・・・。
第11話 最終回
桜まつりの夜、視覚を失うタイムリミットに間に合わなかった雨は、太陽が作った最初で最後の花火を見ることができなかった。それに気付いた太陽は、悔しさを堪えきれずに声を詰まらせるが、雨は「十年間願い続けた夢を叶えてくれて、本当に本当に、ありがとう」と伝えて笑顔を見せた・・・。日付が変わる午前0時、残された五感の最後のひとつ「聴覚」が失われるまでのタイムリミットが、1週間後の3月31日午後4時と表示される。雨は、線香花火の勝負で勝ったから、と言って太陽にひとつ頼み事をする。太陽は、「雨の心を支える言葉を伝えるよ」と約束していた。雨と太陽は、長崎孔子廟や眼鏡橋を訪れたり、もう一度観覧車に乗ったりして幸せな時を過ごす。そして3月31日、雨が最後に行きたいと言ったのは、ふたりが出会った場所・長崎県立長崎高校だった。雨は、春陽にメイクをしてもらい、太陽と一緒に訪れるが・・・。
(フジテレビ「君が心をくれたから」より)
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