第1話
6歳のときに母を亡くした椎名瞳は、それ以来22年間、父・雅彦と一つ屋根の下で暮らしてきた。助産師の仕事をしていて、院長・杉村節子(小林聡美)のもと、新しい命の始まりの瞬間に立ち会うことに幸せを感じている。一方の雅彦は、頑固で破天荒な自由人で、男手一つで育てた瞳を心から愛し、持ち前のキャラクターと話術を生かして敏腕実演販売士として働いてきた。迎えた2024年の元旦、瞳はおせち料理を前に、雅彦から「報告したいことがある」と切り出され、瞳も報告があったため、2人は「せーの」で同時に発表することに。瞳は「3カ月後に結婚します」、雅彦は「3カ月後に死んじゃいます」とそれぞれ告白し、父と娘は互いにがく然。そして雅彦は、瞳の恋人・川上一馬(濱田岳)が10歳年上の売れないお笑い芸人だと知り、猛反対。瞳も、ステージ4の膵臓がんだという雅彦の告白をつまらない嘘だと決めつけ・・・。それでも瞳は、何とかして結婚を認めさせ、祝福してもらうことが先決と考えるのだった。そして、嘘であってほしいという願いを胸に、雅彦の主治医のもとを訪ねて・・・。
第2話
瞳の婚約者・一馬のお笑いライブを偵察に来た雅彦は、一馬がバツイチの子持ちだと知たことで大激怒し、瞳と激しい言い争いを繰り広げる。瞳は、病気の雅彦のことなど構わず、一度はキャンセルした結婚式をやはり決行すると息巻くが、一方で、雅彦に祝福されて結婚したいという思いは捨てきれない。そんな中、徐々に体に異変を感じ始めた雅彦は、瞳の「結婚までにやりたいことリスト」にならい、自らも「死ぬまでにやりたいことリスト」を作る。そのリストには、人生でやり残したことや、過去と向き合おうとする雅彦の最後の願いが詰まっていた。それを見た瞳は、自分という家族がいながら、雅彦がこうも簡単に死を受け入れるのか、ますます分からなくなってしまい、緩和ケア医の阿波野を訪ね、雅彦の本当の気持ちを聞き出そうとするが・・・。さらに、雅彦に1日でも長く生きてほしいと願う瞳は、雅彦が治療を受ける気になるよう、ある作戦を考える。
第3話
瞳と雅彦は、伊豆を訪れたが、雅彦が突然激しい痛みをうったえ、海岸で倒れた。幸い、持っていた痛み止めの薬で事なきを得るが、処方された薬が医療用の麻薬であることに事の重大さを感じた瞳は、その晩、結婚までにやりたいことリストを訂正する。更に、がんの進行を遅らせたいと考え、食事療法を始めようと意気込む。そんな中、一馬がお笑い賞レース「D1グランプリ」に出場すると宣言。一馬は、これまで2年連続予選落ちだったが、瞳は決勝に残り、更に優勝して雅彦に結婚を認めてもらおうと言い出す。今度は正攻法で一馬の実力を認めさせ、安心してもらいたいと考えたのだ。そして雅彦は、次の死ぬまでにやりたいことを叶えるため、瞳を休日の遊園地に誘う。瞳の父親としてのある特別な思いがあったのだが、当日、ネタ作りに行き詰まった一馬と、息子の龍之介も一緒にやって来て・・・。
第4話
雅彦が、死ぬまでにやりたいことリストをかなえていくにつれ、それが死へのカウントダウンのようで辛さが募る瞳は、一馬に、「今は雅彦のことだけを考えたいから結婚のことは、一旦待ってほしい」と正直な気持ちを伝える。しかし、偶然出会った緩和ケア医の阿波野から自分の幸せも考えてほしいと諭され、その言葉に一馬の顔が思い浮かぶも、やはり自分のことを優先する気にはなれない。ショックを受けながらも瞳との結婚をあきらめきれない一馬は、あることを決意する。瞳は、自分のことより、まずは雅彦の願いをかなえようと考え、やりたいことリストの三つ目、「神(じん)に謝る」を実行するため、雅彦の同級生だった神健一郎を見つけ出す。しかし、雅彦は神に会うのが怖くなったと言い、聞けば中2の時、好きな人をめぐって雅彦が親友の神を裏切ったのだという。雅彦は、瞳に背中を押され、喫茶店を経営している神の元を訪ねる。久しぶりに会った神は、客が雅彦だと分かった途端、顔をこわばらせ、雅彦のことをまともに見ようとしない。48年前のことを謝るかつての親友・雅彦に、「謝らなきゃいけないのは僕の方だよ」と言うが、雅彦には身に覚えがなく・・・。
第5話
瞳の計らいで、葬儀会社に勤める岸と再び会った雅彦は、自分の葬式を仕切ってほしいと頼む。岸は、雅彦の頼みに戸惑いを隠せず、瞳もまた、葬式のことなど想像したくないと怒りだす。しかし、雅彦はあらかじめ決めたプランで最後は明るく見送られたいと話し、瞳にも現実から目をそらさないよう言い聞かせる。そして、自分が望む最高の葬式プランを考えるべく、医師の阿波野からすすめられた「人生ノート」を書き始めて・・・。そんな中、学習塾の講師として働き始めた一馬は、持ち前の頭脳とトーク力を生かした授業が好評で、正社員として雇用されることになる。経済的に安定し、これで雅彦にも瞳との結婚を認めてもらえるはずだと喜ぶ一馬だが、それは正式に芸人をやめるということ・・・。瞳は、雅彦に娘の花嫁姿を見せたいという一馬のやさしさを理解しつつも、結婚の保留を望む自分の気持ちを置き去りにされたことで、モヤモヤが募る。更に、一馬が芸人をやめたと知った雅彦からも思わぬ反応が返ってきて・・・。一方で、一馬の決断は、気づかないうちに龍之介との親子関係にも暗い影を落とし・・・。
第6話
自分たち父娘のせいで一馬が芸人をやめ、それに反発した龍之介が家出する事態に責任を感じた瞳は、一馬との結婚をやめると言い出す。同じ頃、人生ノートを書き終えた雅彦は、一度は受け入れたはずの死を前に、やはり瞳と別れるのが寂しいと阿波野に本音をこぼす。一方で雅彦は、日に日に悪化していることから、これ以上は隠し通せないと、社長の中井と部下の加賀谷に自分が末期の膵臓がんであることを告白し、治療は受けないという雅彦の覚悟に、2人は言葉を失う。一馬との婚約を解消し、これで心おきなく雅彦のことに専念できると思っていた瞳だったが、心はどこか落ち着かず、眠りにつくことができない。雅彦もまた、瞳と一馬の結婚が破談になったと聞いても手放しで喜ぶ気にはなれなかった。そんな中、瞳から結婚をやめたと報告を受けた友人の岸が、突然、椎名家を訪ねてくる・・・。
第7話
雅彦が瞳のためにサプライズで開いた退院祝いを機に、瞳はギクシャクしていた一馬との関係を修復した。雅彦も、一馬や龍之介の隣で幸せそうに笑う娘の姿に、2人の結婚に反対はしないと決める。一方で、病魔は容赦なく雅彦の体をむしばみ、食は細くなり、手にもしびれが出始める。できないことが増えていくことへの悔しさと不安を募らせる雅彦。瞳は、結婚までにやりたいことリストに書き足した「お父さんと旅行に行く。もう一度」をかなえるべくキャンプに行こうと提案する。しかし、雅彦の薬の量が増えていることに気づいていた瞳は、体調が心配でキャンプへ行くことを躊躇するが・・・。「俺に気を使うな」という雅彦の言葉や、「たまには自分で自分の機嫌をとってあげなきゃ」という節子のアドバイスもあり、瞳は、美奈子と以前から行きたかったエステや料理教室に行く。しかし何をしていても雅彦のことが頭に浮かぶび、瞳はキャンプ用の道具をたくさん買い込んで家路を急ぐ。その頃、「会って話したい」という瞳からの連絡に、「少し時間をください」と返事をしていた一馬は、あることを決意して・・・。
第8話
晴れて結婚することになった瞳と一馬は、結婚式の内容を雅彦のための式にしたいと黒沢と舞衣に相談する。その頃雅彦は、日々増していく痛みに限界を感じ、ついに引退を決意する。そして引退の日に、社長の中井が自ら考案した、初のオリジナル商品を実演販売することになる。一方、自宅ではキッチンで吐血するなど病状が悪化し、瞳も気が気ではない。瞳は、結婚式の招待状を手渡し、娘のウエディングドレス姿をその目で見ることを約束させる。翌日、雅彦は、瞳の忘れ物を届けに助産院を訪れると、節子に声をかけられ、瞳が出産を控えた夫婦に沐浴指導している様子を見学する。その晩、この先瞳の支えになるであろう一馬をこっそり呼び出して・・・。迎えた最後の実演販売当日、雅彦は痛みをこらえながら売り場に立ち、いつものように声を張り上げると、働く雅彦の姿を見届けようと、一馬やまきがやって来るが、なぜか瞳の姿はなく・・・。
第9話
雅彦は、自身の葬式のプランを相談するため、岸が働く葬儀場を訪ねる。そこでパーッと楽しい葬式にして、遺影も弔問客が思わず笑ってしまうような写真がいいとリクエストする。岸は、前代未聞の企画に戸惑いながらも、だったら・・・と、瞳が遺影の写真を撮ることを提案し、瞳も了承する。撮影会は、椎名家で行われ、岸と美奈子も駆けつけ、大学時代の写真部さながらの雰囲気で進められていく。雅彦は、そんな3人の姿に、自分の知らなかった娘の姿を見られた喜びを感じる。そして、底抜けの明るさで、遺影とは思えないポーズを次々と繰り出す。そんな父に、瞳はあきれながらも、雅彦の願いをかなえたい一心でシャッターを切っていく。一方、死ぬまでにやりたことリストの項目は残り三つ。そのうちの1つで、12歳のときに小学校の校庭に埋めたタイムカプセルを掘り出したいと考えるが、体の痛みは慢性化し、体力も落ちていることから半ばあきらめかけていた。そこで、代わりに瞳と一馬が現地の様子を見に行くと、小学校の前には工事用のフェンスが立ち並んでいて・・・。
第10話
亜弥の陣痛が始まり、初めてお産をメインで任された瞳の緊張が高まる。夫の祐作に付き添われて助産院に到着した亜弥は、すぐさま分娩室へ入る。遅れて亜弥の両親もやって来て、別室でその瞬間を待つことに・・・。ところが、翌朝になっても赤ちゃんは産まれてこない・・・。何度もやってくる激しい痛みに疲労困憊の亜弥の姿を見た瞳は、2人で親になることを決めた亜弥と祐作のこれまでを思い返し、助産師としてある言葉をかける。その頃、入院中の雅彦は、病床で自分の葬式に呼んでほしい人のリストを作っていた。その後、病院にやって来た瞳に「家に帰ろうよ」と頼む。瞳も、雅彦のいない家に1人でいることがつらく、医師の阿波野の許可を得て、残された時間を自宅で過ごすことになる。まきや一馬の手を借り、自宅へ戻った雅彦には、実はある後悔があり、それを知った瞳は・・・。
第11話 最終回
3月25日、瞳と一馬の結婚式当日、朝からまきと阿波野が椎名家にやって来て、雅彦が新婦の父として瞳の隣に立てるよう、万全のサポート体制を整える。そんななか、瞳はなぜか雅彦の目をかいくぐるようにして、一足先に式の会場へ・・・。そんな瞳に、一抹の寂しさを覚える雅彦だが、妻・佳乃の写真に「行ってくるからな」と伝え、まきと阿波野に支えられながら家の外へ。その後、雅彦が目にしたのは・・・。瞳から愛する父へ贈る最後のプレゼント。瞳と一馬が心をこめて作り上げた一世一代の結婚式とは・・・。
(関西テレビ「春になったら」より)
|