「べっぴんさん」
すみれ。それがこの物語のヒロインの名前です。
昭和のはじめ。神戸の山の手で生まれたすみれは、早くに亡くなった母から教えられた刺しゅうや手芸が大好きな女の子でした。
会社を経営していた父、活発な姉のもとで何不自由なく育ち、19歳で結婚、ほどなく娘を授かります。
順風満帆に思われた人生でしたが、戦争ですべてが変わります。
夫は出征し、家は焼け、戦争が終わると財産は没収。
おっとりとしたすみれはどうしていいかわかりません。
そんなとき、幼い娘のために手作りした小物を見た人から「それを売ったらいいんじゃないか」と言われたことをきっかけに、すみれは生きていくために子供服作りを始めます。
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